CMRC 構造物性研究センター

KEK

構造物性ユーザーグループミーティング開催報告

ユーザーグループ代表 野田幸男

大阪府立大学 中百舌鳥キャンパスでの日本物理学会2010年秋季大会に合わせて、 恒例の構造物性ユーザーグループミーティングを開催しました。 お陰様で今回も、多くの方の参加頂き盛大に執り行うことができました。 詳細を以下にまとめます。

<構造物性インフォーマルミーティング 第一部>
日時: 9月24日 (金) 17:30-19:30
場所: 物理学会 GD会場

1. PF構造物性UG 世話人挨拶
最初に、PFの構造物性ユーザーグループの世話人の東北大学の野田氏の方から、 挨拶を頂き、放射光・中性子・ミュオンの施設を中心とした 構造物性全般の情報交換の場であるミーティングを始めました。


2. SPring-8施設報告
続いてJAEAの水木氏より、SPring-8の主にJASRIの新ビームラインについて説明がなされました。
・ BL-43LXU(30m long station): RIKEN Quantum NanoDynamics Beamline The next generation for inelastic X-ray scattering
1桁以上の輝度の向上が計算上期待できます。 さらに、今回はフォノンだけでなく、電子励起を見る研究へと展開する予定です。 来年以降実験出来る予定だそうです。
・BL-36XU: 低炭素社会構築に向けた研究基盤ネットワーク整備事業
・BL-28XU: 京都大学革新型蓄電池先端科学研究事業
・BL-03XU:高分子専用ビームライン 
これまでのビームラインの運営と違って 18の会社と、1つの大学でグループの構成で運営が行われていることを説明頂きました。

3. J-PARC報告
JAEA 新井氏よりJ-PARC MLF Statusについて説明してして頂きました。 最初に、現在のJ-PARCの運転状況について、世界トップレベルのリライアビリティ(93%)を 誇っていること、200kWの運転が近づいていること、 先端研究基盤事業に選ばれて、1MWを目指した建設が今後予算の裏付けの下に進められそう であることを説明して頂きました。 続いて、最近の実験ホールの状況の説明として、八木グループの高圧・高温ステーションの オープンが、来年に迫っていること、 共用法で作ることになった偏極+反射率の装置(BL-17)、 微小試料+極限下での実験を目指した装置(BL-18)について説明頂きました。 また、最近の成果として4-seasonの結果や、 BL03でのたんぱく質の構造解析の結果が報告されました。 最後に、この10月よりMLF近傍に新たに売店がオープンすることが報告されました。

4. 物構研施設報告
・構造物性研究センター(CMRC)
CMRCセンター長の村上氏より、センターのの現状を説明して頂きました。 最初に、新しい研究プロジェクト「強相関分子性結晶プロジェクト」が プロジェクトリーダー産総研 熊井氏らによって立ち上がったこと、 さらに、この研究プロジェクト推進のための、  放射光 S2課題が中尾朗子氏により立ち上がったことを説明頂きました。 また、最近のセンターの関係する装置の状況として、 BL-16に設置された軟X線回折装置や、建設中の 超伝導磁石搭載型の軟X線回折装置、 スカーミオン格子の検出を目指した軟X線小角散乱装置の建設の話、 さらにJ-PARCの実験装置の話もして頂きました。 また、大学等連携支援事業、CMRC研究会、 KEK-JAEA合同セミナーである量子ビーム構造物性セミナー 、 最先端研究開発支援プログラム「強相関量子科学」 物構研シンポジウムなどの報告がなされました。

・ミュオン施設
J-PARCでのミュオン施設の現状が、門野氏より説明されました。 特に、1つのビームポートの利用しか出来ていないものの、 ついにビーム強度が世界一となったこと、 一方、アプリケーションの整備がまだまだであることが説明されました。 最後に、次の計画として、超低速ミュオンがあり、表面状態の測定に適していることなどの メリットが説明されました。

・中性子施設
KENS装置建設計画については、瀬戸氏より説明されました。 SuperHRPD、ARISA、HRCの装置の状況とともに、 現在のS課題を中心とした運用から来期以降一般への開放されるので 積極的な課題申請をお願いされました。 また、NOVAは、NEDOのプロジェクトでやっているが、2年後ぐらいから 多少使えるようになることが報告されました。 最後に、S課題関連研究会は、各課題ごとに、成果をオープンにして議論しますので ぜひ参加頂きたいと説明されました。

・放射光施設
構造物性ユーザーグループの関係するPF・PF-ARのビームラインの現状について、 中尾(裕)氏より説明されました。 基本的に、各ビームライン(BL-3A,4C,8A,8B)順調に共同利用に供されていることや、 BL-4Cの4軸回折計のΧ軸部の不調修理のためにドイツに送り返して オーバーホールし、合わせてモータードライバ、ケーブル類を更新したことや、 偏光解析装置の来期以降の運用の変更について説明頂きました。 また、今後のビームライン、装置の整備方針について意見交換をしました。 BL-16Aで展開している軟X線回折装置については、現在の回折計の状況と、 最近の研究成果について報告頂きました。 さらに、今年度より開始している超伝導搭載型軟X線回折装置についても説明を して頂きました。

5. JRR-3 FONDER報告
東北大 野田氏よりFONDERの最近の装置状況の説明がされました。 特に、多様な外場下[低温(2.3K-)、高圧(1.2GPa)、電場(20kV/cm)、磁場(1-5kGauss)、電気炉 (-1400K)] での実験のためのアクセサリーが充実してきたことや、2D-PSD検出器の状況について 説明がされた。 また、最後にJ-PARCで共用法で建設が決まったSENJUについて説明がなされ、 あの手この手で実験したいという意味であること、 0.5x0.5x0.5mm3 での磁気構造解析を目指していることを説明して頂きました。

6. その他
最後に村上氏より、科研費の「量子ビーム」の細目が4年目も継続になったので 是非、積極的に出して頂きたいとの説明がありました。また、東北大の野田氏より、 H25に科研費の細目の見直しがあるので、そちらへのコメントがあれば、お願いしたいと 連絡頂きました。

<構造物性インフォーマルミーティング 第二部>
日時: 9月24日 20:00より
場所: とりのすけ 中百舌鳥店

ここ数回の本インフォーマルミーティングは、二部構成となり 一部と二部の場所移動に時間がかかるのが気になっていました。 そこで今回の第二部は、物理学会会場から出てすぐの 白鷺駅近辺で開催することにしました。

内容としましては、今回も構造物性ユーザーグループミーティングに 初めて参加された方々が数人おりまして、自己紹介をして頂きました。 新しい方々に、毎回来て頂け、構造物性ユーザーグループの裾野の広がりに 期待しております。 その後、恒例ではないですが、学生のYさんの御結婚の報告をして頂き、 多いに盛り上がりました。 また最後に、この業界で良く利用している回折計を 取り扱っている業者さんが最近お亡くなりになったことをお知らせするとともに、 皆で哀悼の意を表しました。

今回利用した「とりのすけ」は、 大学に近いという事もあり、学生のための飲み屋さんらしく、 食べ放題、飲み放題という前回の割烹料理とは趣が180°変わった会となりました。 お店にピーッチャーが2個しかないとか、煙たくて目が痛くなるなど、 色々ありましたが、楽しんで頂けたのではないでしょうか。 次回の物理学会でも、構造物性インフォーマルミーティングを行いますので、 皆様の予定に是非入れておいて頂ければ幸いです。

→前回のミーティング報告はこちら