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KEKつくばキャンパスで開かれたTYLスクール・理系女子キャンプの参加者たち/ KEK IPNS

理系分野への進学を目指す女子高校生らを対象とする「TYLスクール・理系女子キャンプ」が4月3日から2日間、KEKつくばキャンパスで開かれ、全国から30人の女子高校生・高専生が参加しました。KEK男女共同参画推進室とTYL日仏素粒子物理学研究所(Toshiko Yuasa Laboratory‐France-Japan Particle Physics Laboratory)の主催、お茶の水女子大学と奈良女子大学の共催で、毎年開催されており、今年で7回目となります。

TYLは2006年5月、フランスの原子核素粒子物理研究所(IN2P3)、原子力・新エネルギー庁・宇宙基礎科学研究所(CEA/Irfu)、日本のKEKとの3者間で締結された新しいタイプの仮想連携研究所で、フランスのCNRSで多彩な原子核研究を行っていた日本人女性研究者、湯浅年子博士(1909-1980年)にちなんで名付けられました。理系女子キャンプの他にも、加速器・測定器、ニュートリノなどに関する研究の人材交流や、お茶の水女子大学の「湯浅年子賞」への協力など地道な取り組みを続けており、KEKがホストし4月中にも初衝突を迎えるBelle II 実験では、フランスが24カ国目の参加国となる下地を作ったことでも知られています。

入校式で挨拶するTYLの二人の所長。Marc Besançon博士(左)と幅淳二・KEK理事(右)

入校式で挨拶するTYLの二人の所長。Marc Besançon博士(左)と幅淳二・KEK理事(右)

初日に行われた入校式で、日本側のTYL所長であるKEKの幅淳二理事が「理系女子キャンプは、女子高校生に少しでも理系に進む勇気を持ってもらいたいという思いで、6年前に始めた取り組みです。女性がたくさん集まる方が、頼りになるとも思っています」などとあいさつ。フランス側のTYL所長のMarc Besançon博士(CEA/Irfu)も「ようこそリケジョキャンプへ。みなさんにはぜひ、卵落としの科学実験や、女性研究者の講義を楽しんで欲しいです」とコメントし、キャンプがスタートしました。

最初に行われた科学実験では、三人ずつ10グループに分かれ、生卵を包んだ装置を、2階(高さ5メートル)、3階(同9メートル)、4階(同13目メートル)の手すりから、1階の床へ割れないように自由落下させるEgg Drop(卵落とし実験)に挑戦しました。生徒たちは、割り箸、紙コップ、アルミホイル、粘土、養生テープ、靴下など用意された材料で、落下のスピードを減速させたり、緩衝材で生卵が割れるのを防ぐための装置を自作。初対面の三人が話し合い、ゆで卵でテストを繰り返すなどし、独創的なアイデアで挑む様子が見られました。

生卵を保護するため、用意された材料を工夫し、独創的な装置を作り上げる生徒たち

生卵を保護するため、用意された材料を工夫し、独創的な装置を作り上げる生徒たち

アルミホイルで作った落下傘を作り、9メートルの高さから紙コップに入れた生卵を落下させる

アルミホイルで作った落下傘を作り、9メートルの高さから紙コップに入れた生卵を落下させる

包装用のビニールを切り貼りして手作りしたパラシュートと、トランプを何枚も丸めた緩衝材で、13メートルの高さから計3回、生卵を無傷で落下させることに成功した広尾学園高校2年、村田有生喜さんは「初対面でもみんなで意見を出し合い、実験を成功させることができました。すごく楽しかったです」と笑顔で話しました。また、筑紫丘高校3年の原口朝妃さんのチームは、養生テープと粘土を錘に使い、紙くずなどを緩衝材にしたユニークな装置を作り、全ての高さからの落下に成功。「高校に理系の女子が少なく、仲間が欲しいと思って応募しました。すごく楽しくて、参加してよかったです。将来の夢は宇宙飛行士です」と興奮気味に語っていました。

夕食後には、物理学を専攻した大学院生2人、ポスドク1人(いずれも女性)がパネラーとなり、それぞれ自分が研究者を目指した経緯や、現在の研究内容と生活、今後の抱負などを発表。生徒たちからは、研究者になるための心構えや、研究職を目指す不安についての質問があり、パネラーに加え、実験のサポートやスクールの運営のために参加した研究者との間で活発な議論が交わされました。

二日目は早朝から、東北大学大学院理学研究科・理学部の関口仁子准教授が、原子の中心にある原子核の中で三つの核子の間で働く「三体力」について、筑波大学・システム情報系の佐野幸恵助教が、ソーシャルメディアと集合知について、それぞれ講義しました。さらに、CEA/Irfuに所属するシニア・サイエンティスト、Nathalie Palanque-Delabrouille博士が、ニュートリノ研究を基に、宇宙の85%を占めるという見えない物質(ダークマター)の正体に挑んだ研究の紹介や、研究者のチームで謎を解明していく科学研究の面白さについて説明し、「科学研究の場は、男性・女性に関わりなく開かれています。研究は、科学的な冒険というだけではなく、多くの人々と出会い、チームで取り組み、協働していくという意味で、人間的な冒険でもあります。皆さんもぜひ参加してください」と力強く呼びかけました。

二日目の早朝から始まった講義に、真剣に耳を傾ける生徒たち

二日目の早朝から始まった講義に、真剣に耳を傾ける生徒たち

宇宙物理学の研究についてわかりやすく語るCEA/Irfuのシニア・サイエンティスト、Nathalie Palanque-Delabrouille博士

宇宙物理学の研究についてわかりやすく語るCEA/Irfuのシニア・サイエンティスト、Nathalie Palanque-Delabrouille博士

三人の講師への全体質疑では、「天体の質量はどのように知るのか」「ダークマターだけでできた天体はあるのか」などの質問が寄せられた

三人の講師への全体質疑では、「天体の質量はどのように知るのか」「ダークマターだけでできた天体はあるのか」などの質問が寄せられた

また午後には、KEKつくばキャンパス内のPF(フォトンファクトリー)、ATF(先端加速器試験施設)、STF(超伝導リニアック試験施設)、ERL(エネルギー回収型ライナック)など大型実験施設の見学が行なわれました。


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