ハイライト

KEKの特別な日2010

2010年9月16日

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KEKでは、毎年夏の加速器の運転停止期間を利用して、来訪者の方々に実験施設を直接見てもらう機会として「一般公開」を開催しています。今年もつくばキャンパス、東海キャンパスの両キャンパスに、多くの来場者をお迎えしました。

夏休みの最後の週末となった8月28日(土)には、日本原子力研究開発機構(JAEA)東海開発研究センターの施設見学会・実験教室とKEKとの共同企画として、東海キャンパスにある大強度陽子加速器施設(J-PARC)の公開を行い、約3,800人の方が訪れました。翌週の9月5日(日)には、つくばキャンパス内の各実験施設の公開を行いました。最高気温が36℃という猛暑にもかかわらず、約3,300人の方に足を運んでいただきました。

猛暑の中一般公開に訪れて下さった皆さま、本当にありがとうございました。

KEKの「一般公開」は、見学される方にとってもKEKにとっても特別な日です。KEKの職員はこの日のために、半年近く前から公開する施設や展示内容の検討を始め、安全面の配慮や要員の配置など、さまざまな準備を進めてきました。公開日の前日までに、KEKの風景は、日常の姿からがらりと変わります。普段は見かけない説明用のパネルや、敷地のあちこちに設置される案内看板の数々。よく見ると、毎年使い回される看板に修正のための張り紙があったりします。この手作り感たっぷりの雰囲気が、KEKの研究施設の公開の特徴と言えるでしょう。


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一般公開の時だけに現れる案内看板。よく見ると修正のための張り紙が。。。

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手作り感たっぷりの案内表示


加速器や測定器は特別

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Belle測定器を見学する来場者

一般公開の何よりの魅力は「本物の迫力」を味わっていただけることです。通常は運転中で近づくことのできない、巨大な加速器や測定器を直接、それも間近で見ていただくことができるのはこの時だけ。その巨大さは格別で、ここでしか見ることができません。

つくばキャンパスでは、全長約600メートルの電子・陽電子入射器や1周3kmのKEKB加速器、光の工場(フォトンファクトリー)と呼ばれる放射光リング、将来の加速器に必要な技術開発を行っている先端加速器試験施設(ATF)や超伝導リニアック試験施設(STF)、平成17年度まで稼働していた陽子加速器用の前段加速器とその跡地に建設中のデジタル加速器などの加速器や、数多くの実験施設を公開しました。

東海キャンパスのJ-PARCでは、全長約300メートルのリニアック、1周約350メートルの3GeVシンクロトロン、J-PARCで最大の加速器で1周約1,600メートルの50GeVシンクロトロン、世界最強のニュートリノ発生装置である1次ビームラインやハドロン実験施設、物質・生命科学実験施設を公開しました。

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光の工場(フォトンファクトリー)を見学する来場者

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KEKB加速器を間近に見学する来場者

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コッククロフト・ウォルトン型加速器の撮影をする来場者

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J-PARCハドロン実験施設では学生が指し示す方向にビームが流れる。

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J-PARC物質・生命科学実験施設を見学する来場者

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J-PARCニュートリノビームラインの解説を熱心に聞く来場者


見学された方々からは「広い!」「大きい!」「巨大なのに精密!」というような感想が多く寄せられ、やはり研究所や加速器の巨大さに驚かれた方が多かったようです。構内のそこここで、職員による説明に熱心に聞き入る方や、職員に次々と質問を投げかける方が見受けられ、KEKの研究に興味を持っていただけたようです。また、最近静かなブームになっている大規模施設や工事現場の見学ツアーなどの影響でしょうか、カメラを手に研究施設の写真撮影をされる方の姿が多いこと印象的でした。

参加型・体験型イベントは特別

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おもしろ物理教室の虹色万華鏡

つくばキャンパスの一般公開では、研究施設の公開とともに「ラジオを作ってみよう」「おもしろ物理教室」「霧箱コーナー」「科学おもちゃコーナー」などの参加型・体験型のイベントを毎年行っています。これらのイベントも公開時だけの特別なものです。これらは毎年大人気で、抽選で参加者を決定するラジオ製作やおもしろ物理教室の抽選会場では「やったー!」という当選して喜ぶ歓声が聞こえ、同時に、抽選に外れた子どもたちからは「あ~あ…」と残念がる声も。

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大盛況の科学おもちゃコーナー

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真剣な眼差しでラジオ製作に取り組む参加者

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大人気のおもしろ物理教室で虹色万華鏡の製作に取り組む参加者

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放射線科学センターで放射線遮蔽実験をする小学生からは「アルミニウムやアクリルは放射線を通すが、厚い鉛は放射線を通さないことがわかった」という感想が聞かれた。

そのほか抽選の必要のない霧箱製作や科学おもちゃのコーナーでも順番待ちの列ができるほどの大盛況で、参加した子どもたちは、楽しみながら実験の原理など、科学に触れていました。その後ろで真剣な眼差しで説明に聞き入っているご両親の姿もまた、印象的でした。

また、放射線科学センター、計算科学センター、超伝導低温工学センター、機械工学センターにおいても、放射線測定体験、計算機・ネットワーククイズ、ゆっくりブランコ、材料体験コーナーなどの参加型・体験型のイベントが今年も盛りだくさんでにぎわうとともに、KEKでの研究を支える基盤技術にも来場者が興味を引かれているようでした。

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計算科学センターのマシン室見学ツアーの様子。スパコンの空冷の風を確認している。「普段見られない場所を見られてよかった」という感想が聞かれた。

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超伝導低温工学センターで強磁場体験をする来場者からは「教科書の図だけで習った磁力線が実際に目に見えたのが面白かった」という感想が聞かれた。

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機械工学センターで材料体験する来場者からは「アルミ丸棒は曲がりやすいがアルミのパイプは曲がりづらいことが分かった」という感想が聞かれた。

研究者にとっても特別

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来場者との会話を楽しむ研究者


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研究者の実演に真剣な眼差しで見入る子どもたち

研究者たちは、研究グループのミーティングや国際会議などで自分の研究内容の話をすることには慣れていますが、一般の方々に自分の研究内容を説明する機会は多いとは言えません。国際会議での成果発表はもちろん重要ですが、自分の進めている研究の成果を国民の皆様に直接説明したいという気持ちも常に持っています。そう、この一般公開はその絶好のチャンスなのです。みなさんは「研究者」にどのようなイメージをお持ちでしょうか?白衣を着て実験室にこもり、黙々と実験を行うイメージや、度の強い眼鏡をかけた変わり者・・?? 一般公開で、展示施設の説明パネルの前で身振り手振りを交えて一生懸命に話す姿や、公開施設の前で一生懸命呼び込みをする姿を見て頂くと、研究者のイメージが変わるかもしれません。彼らの説明がわかりやすかったかどうかは見学された皆様にお聞きしなければわかりませんが、研究者はこの日一日を楽しみました。

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講演後の質問を受ける西川公一郎素粒子原子核研究所長

また、第一線の研究者が最新の科学の動向などを伝える講演会も人気のある企画の一つです。今年は若槻壮市物質構造科学研究所副所長による「生体ナノマシンの構造とコントロール」、西川公一郎素粒子原子核研究所所長による「謎の粒子ニュートリノ」の2つの講演を行い、各分野における研究の最前線を紹介しました。講演後の質疑応答では来場者からの質問も多く出されるなど、その関心の高さに驚かされました。

また来年も特別

KEKの職員一同、皆様にお越しいただくのを楽しみにして、毎年一生懸命準備をしています。準備不足で至らない点も多々あったかと思いますが、お越しいただいた皆様には心の底から感謝しております。今年は猛暑の中の公開であっこともあり、すべての施設を見学することが難しかったのではないでしょうか。「来年の公開にもぜひ来たい」「KEKの公開を知り合いに紹介したい」などの声も多数聞かれました。来年の公開も特別な日となるはずです。ぜひ来年もお越しください。お越しいただけなかった皆さま、来年は是非ご参加下さい。KEK職員とともに一般公開を楽しみましょう!お待ちしております。



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