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「この日限定」を満喫 2009.9.10 |
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〜 KEK一般公開 〜 |
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まだまだ日中は暑さが身にこたえるけれど、朝夕のひとときの思いがけない涼しさや晴れた日の空の高さに、ああ夏が終わるなあとふと気付く、今日この頃。あちこちでお祭りも終わったこの時期、KEK構内がどことなくそわそわとし出します。 広大な敷地のあちこちで、夏の間に元気良く伸びた草丈が、今日はあちらのエリア、今日はここまでと、次々に刈られ、モザイク模様のように変わっていきます。と思えば、どこからともなく無数の看板が立ち並び、にわか停留所が出没。構内の道路を行けば、いつもは研究にいそしんでいるはずの研究者たちが、トラックや電気式運搬車に乗ってなにやら忙しそう。額に汗しながら什器を運んだり、看板を組み立てたりしています。この様子を見て、いよいよ一般公開も今週末かと、職員たちのお祭り魂にも火がついてくるとかこないとか。今回は、9月6日の日曜日に行われた、KEK一般公開の様子についてお伝えします。 見どころがいっぱい KEKの一般公開は昭和52年から始まり、今年で33回目を迎えます。加速器の稼動を止めてメンテナンスなどを行う夏の時期を利用し、稼動時には人が立ち入ることの出来ないトンネル内の加速器や、先端の技術開発に取り組んでいる実験施設など、無数の研究施設のほぼ全てを公開し、訪れた皆さんにその大きさ、精巧さなどを体感してもらうことができる、年に一度のイベントです。 今年も、電子や陽電子を加速器に送り込む全長600mの線形加速器や、それに繋がる周長3kmの円形のKEKB加速器、放射光科学研究施設フォトンファクトリーの光源加速器など主力の加速器群のほか、これらの稼動をサポートするための工作技術や超伝導応用技術、高速計算システムや放射線管理といった技術開発を行っている施設などがそろって施設を公開。それぞれの研究成果や装置を展示したり、研究員が自分の研究について説明したり、ときには実演したりと、様々な方法で来場した方々にアピールしました。 こんな研究もしています 今年初めてその内部を披露した施設が、先端計測実験棟(図1)。ここでは低温検出器を使った宇宙背景放射(CMB)の偏光度測定について研究しているKEKのCMBグループが研究成果を公開しました。"宇宙の始まりをCMBで見る"とのテーマのもと、クリーンルームの公開や世界に数個しかない測定器の展示などを行いました。「KEKといえば加速器、というイメージのなか、自分達の研究は一般の方に面白いと思ってもらえるのか?という不安があったものの、『宇宙の創成に興味があるんですよ』と訪れた方に言っていただいてとても嬉しかったです」と顔をほころばせたのは、今年初参加のCMBグループ員たちでした。研究成果の発表時とは違った緊張感が研究者にはあるようですね。 フォトンファクトリー(図2)の入口には、今年新しく"物構研紹介コーナー"がお目見えしました(図3)。"物構研"こと物質構造科学研究所では、放射光、中性子、ミュオンのビームを使い分け、タンパク質から超伝導までさまざまな研究を進めています。中性子科学研究施設、ミュオン科学研究施設についても同じ会場で展示したので、会場となったフォトンファクトリーは本当に盛り沢山の内容となりました。 物構研広報コーディネーターの山中敦子さんはこう感想を述べました。「長い長い冒険物語を読んでいても、主人公がどんな宝物を探しているのか、誰を救う旅をしているのか、テーマが分かっていれば読み手が物語の中で迷うことがないように、フォトンファクトリー来場者の方々が『結局ここは何をやっているところなの?』と迷うことの無いよう、一つの道しるべとしての役割を果たすことを意識しました。なので、『なるほどね!』『そうなんだー』『この後(の施設公開が)楽しみだね!』という声を頂いたときには本当にホッとしました。」 科学の原理を楽しく体験 一方、いつも定番人気を呼ぶ体験教室の各会場も、変わらず賑わいました。今年の「おもしろ物理教室」では、虹のタペストリー制作を行いました(図4)。これは黒い紙の上に小さいプラスチックのビーズを敷き詰めた壁飾りを作るというもの。ビーズに後ろから光を当てると光の分解の原理により、虹状の模様が現れます。暗くした会場でライトをあて、自分で作ったタペストリーに模様が現れるのを見た子どもたちには、晴れ晴れとした表情がうかがえました。 ノーベル賞理論の解説も 今年の目玉となったのが、昨年のノーベル物理学賞を受賞した、小林誠KEK特別栄誉教授による受賞理論の解説講演でした。事前にインターネットで聴講の申し込みを募ったところ、受付開始から1日足らずで定員350名ほどに達するという事態に、準備する職員にも今年の一般公開は特別なものになるかもしれないという予感がこみ上げたものです。実際、講演会場のほかに2箇所設けた同時中継会場にも立ち見の人が出るほどの賑わいとなりました(図5)。 "CP対称性の破れとは"と題した講演に、みなさん口を揃えて「難しい」とはおっしゃっていたものの、もともと興味があり勉強されている様子で、質疑応答の時間には的確かつ大変レベルの高い質問が寄せられる光景に、KEKの研究者も舌を巻いていました。 KEKは物理学という難しいテーマを扱っている研究所ですが、毎年の一般公開には小さなお子さんにも沢山来場していただいています。今年は夏休みが終わった後であったことも影響したのでしょうか、少し少なかったようです。それでも1日で3900人もの方にご来場いただいたことは、研究者はじめ職員にとっても大変に嬉しいことでした。 KEKでは加速器を用いた素粒子物理実験や、放射光源加速器が生み出す放射光を利用した物質や生命科学の研究をしていますと、言葉で説明しても、なかなか理解いただけないのがKEKの研究テーマの難しさです。このようなイベントを通じ、本物の研究施設をご覧いただくことで、一般の方に少しでも興味を持っていただけることは、研究者はじめKEKで働く人間の励みになることでしょう。晴天の暑い日差しのなか、KEKまで足をお運びいただいた皆様、本当にありがとうございました。また来年もお待ちしております!
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