超伝導低温工学センターでのLHC用大口径超伝導双極磁石開発

超伝導低温工学センターでは、CERNと協力してLHC高輝度化アップグレード計画で必要になるビーム最終収束部に設置されるビーム分離用大口径超伝導双極磁石(D1)の研究開発を進めています。
主な仕様としてコイル口径150mm、定格磁場5.6T、磁場長35Tm、1.9K冷却での運転負荷は78%となります。
短尺の2m長モデル磁石をセンターで試作しながら開発を進め、これまでに既にモデル1号機及びモデル1号機の分解再組み立て及び試験を行なってきました。
現在は、モデル磁石2号機(図1)が完成し励磁試験を進めています。
図2にモデル1号機及びモデル2号機のクエンチ試験結果を示します。
モデル1号機は最初クエンチ性能が仕様を満たしませんでしたが、分解再組み立てで内部応力を追加し仕様を満たしました。
2号機ではこの結果及びCERNからの仕様変更を勘案して設計を進めた結果、2号機においてもクエンチ性能について仕様を満たしました。今後モデル3号機を試作し再現性試験を行うとともに磁場性能などについて確認を進め実機製造に向けての最終設計を詰める予定です。
なお、この研究開発は素核研ATLASグループのサポートのもと機械工学センターからのエンジニアリング支援及び加速器研究施設超伝導磁石グループの磁場測定や構造解析計算での支援を受けて行なっています。

図1 完成したHL-LHCビーム分離用大口径超伝導双極磁石モデル磁石2号機
図2 D1短尺モデル磁石クエンチ試験結果