大学共同利用機関シンポジウム2020

大学共同利用機関シンポジウム2020が10月17,18日に開催されました。このシンポジウムは、大学共同利用機関が行っている学術研究を広く一般の皆様に知って頂く機会として、2010年から毎年開催されています。今年はコロナウイルスの影響によりオンラインでの開催となりました。

10月17日(土)は研究トークとして、各機構の紹介と研究者が行っている研究のトピックスを紹介しました。KEK共通基盤研究施設からは、平木雅彦機械工学センター長が「ロボットによるWith コロナ時代の加速器実験」と題した講演を行いました。KEKの放射光実験施設では、X線回折という手法で物質構造の解析を行っていますが、実験では調べたい試料をビームラインにセットする必要があります。今年は新型コロナウイルス対策のため、研究者が現地で直接操作することが難しい状況になってしまいました。機械工学センターでは、KEK物質構造科学研究所構造生物学研究センターと共同で試料交換をロボットで行うシステムを開発し、リモート実験を行う環境を整えました。試料交換の高速化や大量の試料をRFID タグで識別する方法など、コロナ時代に向けた研究開発を続けています。

講演スライドより、試料交換システムPAM

10月18日(日)には、Gather Townというオンライン交流ツールを使った展示が行われました。Gather Townはウェブブラウザを通して、仮想的な会場内を動き回り、展示コンテンツを見たり他の参加者と会話ができるツールです(昔のドット絵時代のゲームのような感覚に懐かしさを感じる人もいるでしょう)。共通基盤研究施設の展示では、施設を構成する4センターの紹介と、今年のトピックスとして「宇宙船内用線量計PS-TEPC」「Green Computing (スパコン睡蓮)」の紹介をパネルで行いました。説明員として佐々木施設長、放射線科学センターの岸本助教、計算科学センターの松古助教が参加しました。

PS-TEPCは放射線量が地上の100倍以上にもなる宇宙船の中で使うための線量計で、放射線科学センターが開発を進めています。宇宙飛行士が船内活動を安全に行うためには、宇宙放射線による被ばくの影響を正確に測定する必要があります。PS-TEPCは生体組織に近い元素比率を持った物質で作られ、入射粒子の飛跡を3次元で取得できるのが特徴です。スパコン睡蓮は、液浸冷却システムによる低消費電力のシステムで、PEZY社によるメニーコア・プロセッサPEZY-SCを搭載しています。計算科学センターでは、システムを開発したExaScaler社との共同研究で、素粒子物理や宇宙物理のシミュレーションのための高性能アプリケーションの開発を行っています。

関連情報