H.Tada

所要時間:約5分

B -Lab班と理論班は互いに協力しながら研究を進めました。B -Lab班では、Belle実験の実際のデータを解析し、理論班が検証した文献値と解析結果を比較して、B中間子が崩壊してできた粒子の正体を探りました。/<i class='fa fa-copyright' aria-hidden='true'></i> KEK IPNS

B -Lab班と理論班は互いに協力しながら研究を進めました。B -Lab班では、Belle実験の実際のデータを解析し、理論班が検証した文献値と解析結果を比較して、B中間子が崩壊してできた粒子の正体を探りました。/ KEK IPNS

2019年8月5日〜8日の間、2019年度Belle PlusがKEKつくばキャンパスで開催されました。Belle Plusとは、KEKつくばのKEKB加速器を用いたBelle実験で実際に行われてきた、最先端の研究活動を高校生の皆さんに体験してもらうことを目的とした素粒子サイエンスキャンプです。Belle実験は、小林誠・益川敏英両博士の2008年のノーベル物理学賞受賞に貢献しており、現在はBelle実験のデータ解析も行いつつ、KEKB加速器とBelle実験をアップグレードしたBelle II実験が行われています。

Belle Plusでは現役のBelle実験グループの研究者による講義や施設見学に加え、4つのコースに分かれた実習が行われました。それぞれのコースはBelleの実験データの中から粒子を探索する「B-Lab」班、宇宙線(ミュー粒子)の速度を測定する「宇宙線速度測定」班、自作したワイヤーチェンバーという粒子検出器を用いて宇宙線の降り注ぐ角度を測定する「ワイヤーチェンバー」班、Belle実験で観測可能な現象を理論的に研究する「理論」班です。

今年は北海道、茨城、奈良、沖縄など約20の都道府県の他、海外のイギリスからも参加者があり、合計24名の高校生が集まりました。実習の時間には参加者は皆熱心に手を動かし、活発に仲間や講師と議論を交わしていました。また、海外からの参加者に日本語のサポートをするなど、互いに助け合いながら過ごす姿も見られました。最終日には結果発表会が行われ、各グループともこれまでの研究成果を発表し、質疑応答の際には時間いっぱいまで質問が途絶えないほど積極的な議論が交わされました。

理論班は粒子の反応の様子を表すファインマン図を描きながら、B中間子がどのような崩壊反応をするか理論的に予測しました。その上で、B-Lab班の解析結果を参照しながら理論予測が正しいか考察しました。

理論班は粒子の反応の様子を表すファインマン図を描きながら、B中間子がどのような崩壊反応をするか理論的に予測しました。その上で、B-Lab班の解析結果を参照しながら理論予測が正しいか考察しました。

Belle II測定器見学の様子。参加者一同は、この他にも加速器施設などKEKの最先端の装置を見学して回りました。(Credit: KEK)

Belle II測定器見学の様子。参加者一同は、この他にも加速器施設などKEKの最先端の装置を見学して回りました。(Credit: KEK)

宇宙線速度測定班はシンチレータと呼ばれる電荷を持った粒子の検出に用いられる物質を2つ用いて、ミュー粒子の速度を測定しました。発表では、測定結果に含まれる誤差も検討していました。

宇宙線速度測定班はシンチレータと呼ばれる電荷を持った粒子の検出に用いられる物質を2つ用いて、ミュー粒子の速度を測定しました。発表では、測定結果に含まれる誤差も検討していました。

ワイヤーチェンバー班ではワイヤーチェンバーの特性を理解し、自分達でワイヤーチェンバーを製作しました。そして、それを用いて宇宙線の角度分布を測定しました。写真手前にあるのが自作したワイヤーチェンバーです。

ワイヤーチェンバー班ではワイヤーチェンバーの特性を理解し、自分達でワイヤーチェンバーを製作しました。そして、それを用いて宇宙線の角度分布を測定しました。写真手前にあるのが自作したワイヤーチェンバーです。

閉会式で、2008年のノーベル物理学賞受賞者の1人である小林誠特別栄誉教授がサプライズゲストとして登場すると、会場は興奮に包まれました。小林特別栄誉教授から1人1人に修了証書が手渡されると、参加者は皆達成感で満面の笑みを浮かべていました。

小林誠特別栄誉教授から終了証書を受け取る参加者。

小林誠特別栄誉教授から終了証書を受け取る参加者。

Belle Plus実行委員長である奈良教育大学理数教育研究センターの片岡佐知子 特任准教授は「毎年とても難しい内容にも関わらず高校生の皆さんが目をきらきら輝かせて積極的に取り組む姿を見るのが楽しみです。研究者さながらの熱のこもった議論を交わす高校生の様子がとても印象的でした」とコメントしました。

参加者は「周囲のみんなが素粒子に興味がある状況で過ごせた4日間は非日常的でしたがとても楽しかったです。またこのような機会があれば参加したいです。」「みんなで話し合う過程が多く、様々な視点から見た実験の改善方法の提案は、客観的な視点が多く勉強になりました。自分がもっと客観視できるようになるためのいいきっかけになったので、これからも客観的な視点を大切にして将来に役立てたいです。」などと4日間を振り返っていました。

※高エネルギー加速器研究機構と奈良教育大学は、教育及び研究成果の社会還元の推進を目的として連携協定を締結し、Belle Plusを実施しています。


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