ルミノシティー×断面積×時間=反応数

 


SuperKEKB計画では、2010年6月まで稼働したKEKB加速器の40倍のルミノシティ性能を目指し、準備を進めています。
今KEKではKEKB(ケックビー)加速器をアップグレードして実験を行うSuperKEKBへの準備が進行中です。アップグレードの目標は、これまでのルミノシティを40倍にすること。ルミノシティは加速器の性能を表す指標です。

加速器実験では素粒子の反応が数多く起きれば起きるほど、正確に素粒子の性質を決めることができます。その素粒子の反応数を決める公式が、「ルミノシティ×断面積×運転時間=反応数」です。

ルミノシティとは、ビーム衝突型加速器でお互いのビーム中の粒子が単位時間あたりに遭遇する回数のことで、「ルミノシティ」に目的とする素粒子反応の「断面積」をかけ加速器の「運転時間」をかければ、実験で測定する素粒子反応の数になります。


「ルミノシティが高い」とは?

このうち、ルミノシティは加速器の性能で決まる数、また、運転時間も人間で決まる数です。つまり、自然が決めているのは「反応の断面積」であり、実験を行って求めるのが、この断面積です。そしてこの断面積から自然の法則が決定できる、ということになります。

SuperKEKBは、電子とその反物質である陽電子を衝突させてB中間子を数多く作り出し、そのB中間子の変化(崩壊)を追う事で新しい法則を見つけようとしています。B中間子のできる「断面積」は既によく測られているので、「ルミノシティ」を大きくすることができれば、観測できるB中間子の数があらかじめわかります。ルミノシティが40倍になれば、同じ時間で起きる反応数も40倍。これまで、40年かかって取得する反応数を1年で取得できます。あるいは、SuperKEKBで3年間データを取れば、KEKB加速器では、120年分のデータに相当することになるのです。

では、断面積とは何でしょう。

今、1cm2当たりに1個の陽電子と1個の電子を照射します。時々衝突をして、別の素粒子であるミューオンと反ミューオンが対になって観測されます。

仮に、電子と陽電子を100万回当てた結果、98個のミューオン対が観測されたとしましょう。次の実験では100万回に対して105回でした。こうして100万回当てる実験を繰り返しておこなうと、ミューオン対が作られる回数はまちまちなのですが、もっともよく起きる回数が100回であることがわかったとします。この実験では電子と陽電子の衝突でミューオン対になる確率が、100万回に100回、つまり、1万分の1であったことになります。

この時、電子をとても小さな点と考え、陽電子はある大きさを持つ仮想的な板と考えて、1cm2中でそれらが衝突することを想像します。1万分の1の確率で起きるミューオン対の生成を起こすためには、陽電子の板の面積は1万分の1cm2であればよいことになります。この仮想的な板の面積のことを「断面積」と呼びます。実際には、電子も陽電子も構造を持たない素粒子なので、衝突の際に明確な面積があるわけではありません。

物理法則を表す理論は、こうして測定された断面積を計算できるように整備されます。標準理論は、そうした物理法則の集大成であり、いろいろな断面積を計算できるようになっており、実験値をよく再現することがわかっています。

関連サイト

未踏のルミノシティを目指す - SuperKEKB加速器(KEK公開講座2011 PDF資料)
もっと知りたいKEKB加速器(PDF資料)

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