放射線科学センター助教の吉田剛氏が日本原子力学会放射線工学部会学術賞を受賞
2022年9月8日、放射線科学センター助教の吉田剛氏が日本原子力学会放射線工学部会 学術賞を受賞しました。授賞業績は Journal of Nuclear Science and Technology 誌に掲載された論文 “Investigation into activation of accelerators at various synchrotron radiation facilities in Japan” です。
この論文は吉田さんが中心となった、加速器廃止措置の体系的なガイドラインを確立するために実施された日本の代表的な放射光施設における大規模な放射化調査に関するものです。調査では、加速器運転中の中性子束を各種線量計で測定し、一部の施設ではモンテカルロシミュレーションを行い、中性子の空間分布とそのスペクトルを検証しました。また、比較的高い線量率を示すビーム損失点をサーベイメータで特定し、発生した放射性核種とその放射能を臭化ランタン(LaBr3)シンチレーションスペクトロメータによって同定しました。この結果、どの施設でも放射化レベルはかなり低いものであること、コンクリートでできたビームライントンネルには、天然核種を除いて放射性核種は検出されず、放射化が無いことを明らかにしました。また、ほぼ全てのビームライン機器は放射化されないか、あってもその程度は非常に小さいことを明らかにしました。その結果、放射光シンクロトロン施設は加速エネルギーが非常に高いが、放射性廃棄物の発生は非常に少ないと結論づけられました。
この研究は放射光施設に対する加速器廃止措置の体系的なガイドラインの確立のために大きく寄与することから、これが評価され今回の受賞につながりました。