新しい加速器に対するチームの取り組み

ILC ニュースライン

(ILC NewsLine9月25日号)

国際将来加速器委員会(ICFA)のもと設立されたリニアコライダー国際推進委員会(LCB)及びリニアコライダー・コラボレーション(LCC)は2020年6月をもって、7年に渡る任期を終えました。昨今の日本国内における政治的サポートの増加を鑑み、ICFAはILC研究所設立に向けた準備段階に進むべきと判断しました。その第一歩として、ICFAはILC準備研究所の設置に向けてILC国際推進チーム(ILC-IDT)を設立しました。広く一般にリニアコライダーを推進してきたLCBやLCCの活動とは異なり、ILC-IDTは日本をホスト国とするILCに焦点をあてています。

早期実現を目指す高エネルギー物理コミュニティによる明確な後押しもあります。最近発表された欧州素粒子物理戦略のアップデートでは、ILC計画がタイムリーに実現するならば協働したいとする欧州の関心を強調しました。IDTの目標は、非常に野心的ですが、1年から1.5年の間にILC準備研究所設置に向けた準備を完了させることです。ILC準備研究所の組織やガバナンスの提案、ILCの技術的仕様を完成させ建設段階に入れるよう、世界中のラボが準備段階に貢献できる作業スキーム作りなど、やるべきことはたくさんあります。8月に就任したILC-IDT執行部のメンバーはホスト研究所であるKEKのサポートのもと、意欲的にこれらの課題に取り組んでいます。我々の活動に平行して、日本のコミュニティの努力がILC準備研究所設立に不可欠な要素である日本政府の前向きな動きに繋がることを願っています。

最後に、LCB及びLCCメンバー、特にLCCディレクターを務めたリン・エバンス氏とマネジメントチーム、初代LCB議長の駒宮幸男氏、彼らのたゆまぬ尽力のおかげで新たなステップに進むことが出来たことに深く感謝申し上げます。

著者について中田 達也:EPFL(スイス連邦工科大学ローザンヌ校)名誉教授、CERN初代LHCb実験代表。日本に生まれ、1978年から欧州、主にスイスを拠点とし、SIN/PSI、ローザンヌ大学、CERN、EPFLにて活動の他、フライブルグ大学及びETHZ(スイス連邦工科大学チューリッヒ校)にて教鞭を執る。また、中田氏はECFA(加速器将来計画欧州委員会)前議長、CERN理事会/欧州戦略部門のサイエンティフィック・セクレタリーやCERN科学政策委員会議長を務めるなど、欧州素粒子物理コミュニティに貢献してきた。

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