視点:若手研究者がILC計画に参加

ILC ニュースライン

*この記事は、2020年12月24日に発行されたILCニュースラインの翻訳記事です。

ILCは現在の大学生や社会人なりたての若者によって運用されていくものです。2035年に中堅研究者となる現在の若手研究者にとって、ILCは彼らがリーダーシップを取る新たなエネルギー・フロンティア加速器になるでしょう。もし彼らが将来の可能性の一つとしてILCを求めるのであれば、スノーマス2021研究、世界の物理戦略プロセスに参加することが重要です。

アメリカ州ワークショップ(AWLC2020)にて、若手アメリカ人研究者主導で素粒子物理学分野の早期キャリアについて若手研究者と議論が行われました。以下、各若手グループのILC計画に対する意気込みや懸念を紹介します。

 加速器フロンティアグループ:

若手加速器フロンティアグループはILC計画が進んでいることをとても嬉しく思っています。私たちは最新の超伝導RF、高輝度光源、そしてビームダイナミクスの概念を利用して、従来型よりも更にパワフルな装置を製作する機会が得られることに興奮しています。しかし、若手の加速器科学者がILCに参加するにはいくつもの壁があります。主な難題としては、どの国立研究所がILCに参加するのか、どのような面で参加するのかが明確ではないことです。多くの加速器科学は特定の施設と結びついているため、研究所への資金配分は多くの雇用と研究機会を促進することになります。そのほかの懸念としては、博士課程の学生やポスドク、若手研究者にふさわしいプロジェクトがあるかどうかです。比較的小規模なスケールとタイムライン(3-6年)、インパクトのある学術誌での発表、メンターシップに参加する機会が少ないことを意味しています。AWLC2020は上記の懸念事項の多くに対処し、いくつもの非常にエキサイティングな米国の貢献の可能性を実証してくれました。私たちは更なる詳細や雇用機会を期待しています。

ニキータ・ククルヴ、エディス・ニッセン

エネルギー・フロンティアグループ:

若手エネルギー・フロンティアグループはILC物理の可能性、特にエネルギーアップグレードのシナリオに期待感を募らせています。これらの高エネルギーは標準理論の精密な物理機会だけではなく、標準理論を超えたシナリオの研究のために改良された位相空間へのアクセスを得ることができます。物理学的な可能性は画期的であり、提案された衝突型加速器の能力は主にLHC時代の科学者である私たちがワクワクしてきた実験シナリオを提供するものです。よりクリーンな衝突と偏向ビームを使用して作業する機会は、多くの利点の中の例として、新たな挑戦となる経験を私たちに与えてくれます。しかし、物理の可能性は魅力的なものの、ILC計画を本格的に採用することで若手科学者を困難な立場に追い込む可能性もあります。終身雇用同等の職に就ける可能性が低く、このような職を得る競争率が高いため、一部のポスドクは、より確立された資金提供を受けているプロジェクトから離脱することを躊躇しています。また、見通しやプロジェクトへの影響の観点による機会費用が明確ではありません。さらに、ILCは成熟したプロジェクトのため、新たな参画者がハードウェアの革新によって大きなインパクトを与える余地が少ないという印象を与えています。博士号取得者はILC計画に参加するのに有利な立場にありますが、そのようなプロジェクトの現在の規模で行われた仕事、特にアメリカのシステム内のものは論文に落とし込むのが困難です。ILCとHL-LHCのトピックに共同で焦点を当て、新世代の素粒子物理学者の専門知識を活用する新たな終身雇用に相当するポジションに大きな可能性があると考えています。AWLC2020は、若手素粒子物理学コミュニティにさらなる洞察と視野を提供し、ハードウェア開発の余地があると安心を与えてくれ、資金調達機関の関心を引き寄せたことでしょう。私たちは呼んでもらえることを待っています。すでにエネルギー・フロンティア開拓に十分な経験を備えており、新たな領海を渡ることに期待を馳せています。

グレイス・カミング、アンバー・ロウプ

計装フロンティアグループ:

若手計装フロンティアグループメンバーからはILCに関するいくつか不明瞭な点として、資金調達状況、タイムライン、募集職種数、測定器システム設計の現状について質問をしました。今回のワークショップではこれら質問に多くの回答が得られ、非常に生産性が高く有益であったことに感謝しています。総じて私たちのグループはILC計画に期待しており、今回のワークショップは計装フロンティアから多くの関心が寄せられたことでしょう。私たち若手メンバーにインプットを得る機会を与えてくれて感謝しています。

ステファン・ブッタラ、ジェイコブ・チェトルモイヤー、キャスリーン・デューン

英語原文