ILC建設候補地に新しい推進組織設立

ILC ニュースライン

*この記事は2021年2月26日に発行されたILC NewsLineの翻訳記事です。

2020年8月の国際推進チーム(IDT)設立に歩調を合わせて、国際リニアコライダーの建設候補地である東北に新たな組織が設立されました。

東北エリアの大学や県、市町など22の団体から構成される新組織「東北ILC事業推進センター」は、ILC受入環境整備等の実務的検討を行うために設立されました。

同センターの代表で岩手県立大学学長、前KEK機構長の鈴木厚人氏は「地域が主体となって、ILCの受入環境整備を進めて行きたいと考えています」と語ります。

東北地方では、これまで長きにわたり、ILC誘致に向けた様々な活動が積極的に行われてきました。1990年代、日本の加速器物理研究者がリニアコライダーの建設地として、岩手県の安定した岩盤の調査を開始しました。1995年には、岩手県で初の開催となるリニアコライダーの国際会議「第3回リニアコライダーの物理と実験に関するワークショップ(LCWS95)」が開催され、これを契機に、岩手県は科学プロジェクトの情報収集を行う部署を設置。2000年代初頭には、日本の研究者による評価が行われ、リニアコライダー建設に適する地質学的特性を持つ10カ所を特定、現在のリニアコライダーの候補地となっている北上山地もその中に含まれていました。岩手県はそれ以来、一貫してILCの将来の拠点となることに関心を示してきたのです。

岩手でのILC推進活動は県外にも広がりました。2009年には、東北の産学官連携組織「東北ILC推進協議会」が設立されました。協議会は意欲的に活動を展開し、地元産業界対象のILC関連技術セミナーや、市民の理解と支持を得るための広報イベントを開催しています。また、ILCの実現に向けて各種報告書を作成、提言を行うとともに、中央政府に対して要望活動を行っています。東北ILC推進協議会は2018年に、下部組織の東北ILC準備室(ILC受入準備に重点を置く組織)と共著で「東北マスタープラン」を公表しました。マスタープランでは、東北の将来像やインフラ整備に関する官民の役割分担などをまとめています。

「ILCを巡る国際的動向が大きく変化したことから、次のステップとしてILCに向けた準備を行うことにしました」と鈴木氏は言います。新組織「東北ILC事業推進センター」は、東北ILC準備室の後継組織として設立されたものです。

センターの活動内容は、環境整備や施設建設に関する課題の検討、研究者及び家族等の受入れや定住に対応した体制及びまちづくりの検討、地域住民の理解促進活動など、地域が主体となって行うILCの受入環境整備などが含まれています。また、ILCの建設が周辺環境に与える影響や、予想される社会的・経済的影響についても調査を行います。同センターは、ILCの立地を、地域資源の活用、およびその活用方法を検討する機会と認識しています。

東北地方のいくつかの団体では、すでに、外国人研究者とその家族が東北地方で快適・安全に暮らすための方策の検討を始めています。「先行して検討を行っている関係機関と連携し本格的な調査を行い、現実的で具体的なモデル案の作成に向けて調査検討を行う予定です」(鈴木氏)。

また、地域経済の興隆に寄与することが期待されることから、センターでは、ILCの建設・運営への地元産業界の参入を目指しています。今後、加速器関連産業への参入事例を紹介したり、ILC要素技術紹介等を行うILC参入セミナーの開催を予定しています。

現在、新型コロナウィルスの影響で、ILCの支援獲得に向けた活動を対面で行うことは困難な状況です。国内の新型コロナウィルス感染者数は約41万人(2021年2月現在)で、東北の感染者はその1.8%と首都圏に比べてはるかに少ない状況ですが、感染拡大を防止するため大きな制限を受けています。このような状況下でも、東北の人々は、ILCプロジェクト推進のために地道な活動を続けています。昨年夏には、岩手県がオンラインで大臣等と面談するリモート方式で政府要望を実施。北海道・東北地方知事会として、8月、10月に要望を行なっています(文書送付による提言)。9月には、岩手県ILC推進協議会主催によるオンライン講演会を開催。全国各地、一部は海外からの参加もあり、600人以上が聴講しました。

「できることは何でもやっています」と鈴木氏。「感染防止に十分配慮したうえで、研究者とともに各自治体を個別に訪問し、首長等にILCの最新動向とセンター活動状況等を説明しています」(鈴木氏)。 同センターは、日本政府の2022年度概算要求に向けた活動も強化していく予定です。

「IDTのプレラボ実現にむけた活動が本格化しており、建設候補地である東北として、センターはIDTとの連携を強化しています。今はILCにとってまさに正念場。IDTのミッション完遂と、ILC Pre-Lab設立を成功させるために協力していきたいと考えています」(鈴木氏)。

東北ILC 事業推進センター会員:東北大学、岩手大学、岩手県立大学、宮城県、仙台市、気仙沼市、登米市、栗原市、大崎市、岩手県、盛岡市、大船渡市、花巻市、北上市、遠野市、一関市、陸前高田市、奥州市、金ヶ崎町、平泉町、住田町、岩手県国際リニアコライダー推進協議会

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