我々の住むこの宇宙は、約137億年前の ビッグバン(Big Bang)と呼ばれる大爆発から始まり、現在も膨張していると考えられています。つまり最初は非常に高温かつ高密度の状態で、星も生命も存在しない素粒子が飛び交う状態であったのです。膨張とともに温度が冷え密度も下がり、現在我々が目にする様々な物質や天体が形成されてきました。この宇宙の歴史をふりかえってみよう。

まず、アインシュタインの一般相対論で言う時空の概念が適用できるのは、ビッグバンから、時刻 10-44秒後、温度10+32度以降のことであり、ここで重力と他の力が分れたと考えられています。

時刻10-38秒、温度10+29度の頃、大統一理論の相転移が起り、強い相互作用(強い力)と電弱相互作用(電磁気力と弱い力が統合されたもの)が分れたのです。さらに時刻10-11秒、温度10+15度の頃、ワインバーグ・サラム理論の相転移が起り、電磁相互作用と弱い相互作用が分離しました。この段階までの歴史について細かいことはまだわかっていませんが、元々は一つに統一されていたと考えられる力がこのように分岐し、現在知られている四つの力(重力、強い力、弱い力、電磁気力)が生まれたと考えられています。この段階における宇宙の主な構成粒子は、質量が100GeV(10+15度に相当)以下の素粒子(レプトン、クォーク、グルーオン、光子)です。高エネルギ−物理学は、今この宇宙誕生のプロセスを逆にたどって研究している学問と言えます。

また、ここまでの過程で物質と反物質のつりあいに小さなズレが生じたと考えられています。元々は、物質と反物質は同等に存在したはずであるが、CP対称性(電荷と空間反転に対する物理法則の対称性)の破れをもった相互作用と非平衡状態の組合わせにより、ほんのわずか物質の方が反物質より多くなり、結局現在の宇宙を物質の世界へと導いたのです。(Bファクトリ−実験)

さらに時間が経過して時刻10-4秒後、温度も下がり、温度10+12度になると、QCD相転移(参考:格子ゲージ理論)が起り、クォークとグルーオンからハドロン(パイ中間子、中性子や陽子など)が形成されます。

時刻1分、温度10+9度になると、中性子と陽子が反応してできる重水素が分解されないで残ることができるようになるので、それを種とした核融合反応が進み始め、ヘリウム、リチウム、ベリリウムと言った軽い原子核が合成されます。このような宇宙初期の軽元素合成は、理論計算の結果と観測値がほぼ一致し、ビッグバン 宇宙モデルの重要な証拠になっています。

その後も軽元素の原子核、電子、ニュートリノ、光子からなる宇宙は、膨張とともに温度が下がり、時刻数十万年、温度数千度になると、原子核と電子が結合し、中性な原子を形成し始めます。ほとんどの陽子と電子が中性水素原子になってしまうと、それまで荷電粒子と強く反応していた光子は以後、物質と反応をほとんどしなくなってしまうようになりました。各光子のエネルギーは宇宙膨張に伴って下がりますが、宇宙が数千度の温度であった時代の名残りの光子が宇宙空間を満たしているはずです。実際に、温度2.7度に相当する黒体輻射が宇宙を満たしていることが発見され、ビッグバン 宇宙モデルのもう一つの重要な証拠となっています。





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