ここまでは、存在が知られている物質のみを主に考慮してきましたが、宇宙を満たしている物質の量を様々な方法で測定すると、光などの観測では見えていない暗黒物質が宇宙を満たしている可能性が高くなっています。しかも、その量は、光などで観測される質量の何と10倍位ないと観測結果を説明できません。我々の銀河のハロー(周縁部)に存在する暗黒物質としては、冷えて暗くなってしまった白色矮星のような天体の可能性もあり、マイクロ重力レンズ効果による MACHO(Massive Compact Halo Objects)探しなどの観測が行われています。宇宙背景輻射の温度揺らぎとして観測された過去の揺らぎと、揺らぎが成長してできた銀河や銀河団と言った現在の大規模構造との比較からも、重力以外の相互作用が弱い暗黒物質の存在が示唆されていて、幾つかの素粒子モデルからは、超対称性粒子(参考: SUSY粒子探査)や質量も持ったニュートリノなどの候補があげられています。
最後に我々の宇宙の将来を考えてみよう。現在膨張しているこの宇宙も、物質同志がお互いに重力で引き合うことで、膨張速度は少しずつ遅くなっているはずで、物質がたっぷり存在して重力が強ければ将来この膨張が止って収縮に転じるし、物質量が不足していれば減速しながらも永遠に膨張を続けることになります。この境界の密度を臨界密度と言い、現在の宇宙に存在する物質の密度と臨界密度の比を密度定数Omegaと呼んでいます。まだ正確な値がわかっていない密度定数を測定することが、重要な課題ですが、暗黒物質を含めても膨張を止めてしまうほどの物質は存在していないようであり、われわれの宇宙は永遠に膨張し続けるものかも知れません。
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