KEK一般公開2019 共通基盤研究施設の紹介

2019年のKEK一般公開が9月1日に開催されました。天気予報を信じて雨の中準備を行いましたが、一般公開当日は晴れ、9月初旬にしてはそれほど暑くない絶好の天気となりました。機構全体では4,200人を超える来訪者で、共通基盤研究施設の4センターにも多くの方に来ていただきました。昨年から行っている4センターを回るスタンプラリーの景品が途中で無くなってしまうほどでした。

【放射線科学センター】
 放射線科学センターでは、研究活動が安全に行われるよう、またKEKの研究活動によって周辺地域に影響を及ぼさないよう、放射線や放射能、有害廃棄物などの監視・管理を行っています。
 一般公開では、放射線量を調べるための様々な検出器を展示し、KEKがとっている安全対策の説明を行いました。見えない放射線を検出するために、放射線の種類や用途によって様々な検出器が使われています。放射線を扱う施設では、放射線の漏洩が起きないように、また万が一起きた時に迅速に対応できるように常時監視することが重要です。放射線集中監視室ではKEK敷地内の放射線検出器を集中管理し、リアルタイムで監視する様子を展示しました。
 センター2階では、微弱な放射線が入ったカプセルを放射線測定器を使って探す「宝探しゲーム」や紫外線で色が変わる「不思議なストラップ作り」が子供たちに大人気でした。

紫外線で色が変わる不思議なストラップ作り
測定器を持って宝探し

私たちの周りにも放射線を出すものがあり、宇宙からも宇宙線として降り注いでいるなど、放射線は意外に身近な存在です。放射線の性質を理解して正しく扱うことがますます必要となってきています。

【計算科学センター】
 計算科学センターではKEKで行われている幅広い研究に必要な計算機・ネットワーク環境の整備・運用や、ソフトウェアの開発を行っています。
 恒例のコンピュータやネットワークに関するクイズでは正解者に景品を進呈しました。KEKの活動は多くの計算機やそれらを繋ぐネットワークに支えられています。各地の研究所にある計算資源を世界中の研究者が効率よく使うためのグリッドシステムなど、ソフトウェアの開発も欠かせません。コンピュータによるシミュレーションによれば、物質や宇宙の仕組を調べることや放射線治療のような先端医療への貢献も可能です。最近話題の機械学習によって人を見分けるプログラムの実演も行いました。
 Belle II などKEKで行われている実験のデータを保存し、解析するための大規模計算機システムが計算科学センターに設置されている中央計算機です。このシステムを見学していただくマシン室ツアーも多くの方に参加していただきました。

計算機とネットワークにまつわるクイズに挑戦
機械学習で人の顔を認識

【超伝導低温工学センター】
 超伝導低温工学センターでは、KEKが誇る加速器科学の中でも、最先端の超伝導・極低温技術の研究開発を日々進めています。
 屋外に置かれたJ-PARC用の超伝導磁石が見学者をお出迎えします。極低温では電気抵抗がゼロになるという「超伝導」という現象が起こります。この性質を使うと強い磁場を作ることができるため、高エネルギー加速器や検出器に無くてはならない技術です。また物質を極低温まで冷やすために必要な液体ヘリウムを使う技術も重要です。このような研究開発の最先端を分かりやすく解説しました。
 超伝導状態では不思議なことが起こります。それを利用した超伝導コースターでは磁石のレールの上を小さなコマが浮いているのになぜかレールから外れずに滑っていきます。このような不思議な超伝導・極低温技術の世界を体験してもらいました。

J-PARC用超伝導磁石
最先端の研究をパネルで解説
不思議な超伝導コースター

【機械工学センター】
 最先端の研究を行うための実験装置は自分たちで作るしかありません。機械工学センターはKEKの様々な実験装置を作ったり、作るための方法を考えたり、未来の実験装置のための研究を行ったりしています。
 今年の一般公開でのテーマは、実験装置に無くてはならない「ねじ」。小さな機械から大きなビルや橋まで、膨大な量のねじによって支えられています。場所や用途に応じて、様々な大きさや形、素材のねじが必要です。旋盤を用いてアクリル棒からおねじを作る様子やマシニングセンタでねじ穴の加工の様子を見ていただきました。「ねじ切り体験」のコーナーでは実際にアクリル板にめねじを加工する体験をしていただきました。
加速器のためになくてはならないのが、真空を作る技術です。空気が残っていてはビームを高エネルギーまで加速する前に窒素や酸素分子と衝突してしまいます。この空気がなくなってしまった世界を垣間見ることができるのが、真空を体験するコーナーです。他にも実際に使われている工作機械など、KEKの研究活動を支える工作技術を知っていただくための展示を行いました。

真空を体験するコーナー
所狭しと並ぶ工作機械
ねじ切り体験の様子
入口ではだまし絵がお出迎え。歪んだ絵(左)もある場所から見ると正しく見えます(右)

国際交流センターでは、機械工学センターが中心となって準備し、今までに配布されたキーホルダーが展示されました。

共通基盤研究施設の4つのセンターは、それぞれの得意分野によってKEKの活動に不可欠な技術を提供しながら、日々研究や開発を進めています。ぜひ来年の一般公開にも足をお運びください。