放射線科学センター助教の杉原健太氏が日本原子力学会核データ部会奨励賞を受賞

2022年9月9日、放射線科学センター助教の杉原健太氏が日本原子力学会核データ部会 奨励賞を受賞しました。授賞業績はNuclear Instruments and Methods in Physics Research 誌に掲載された論文 “Measurement of neutron energy spectra of 345 MeV/u 238U incidence on a copper target” です。

 この論文は杉原さんが中心となって実施された理研での345MeV/u (*)の238U (ウラン238)ビームが銅ターゲットに入射した際に生成する中性子のエネルギー分布測定に関するものです。理化学研究所仁科加速器科学研究センターをはじめ、不安定核を用いた実験を行う施設では大強度のビームを用いるため、核子あたり数 100 MeV の 238Uビームによる厚い標的によって生成される 2 次中性子(TTY: Thick Target Yield)のデータが極めて重要です。しかし、核子あたり数100 MeV の 238U の核反応の包括的な測定が少ないために核反応モデルの検証が十分でない上、 フラグメント粒子も含めた複雑な計算が必要なことから、モンテカルロ輸送計算コードの計算精度の検証が必要です。杉原氏の測定データは遮蔽評価などの工学に重要なだけでなく、核反応モデルの精度向上など基礎科学にも大きく貢献するものです。

(*) MeVはメガ・エレクトロンボルトでエネルギーの単位。1 eV は 1 V(ボルト)の電位によって一つの電子が得るエネルギーに相当し、MeVはその百万倍。原子質量単位uは炭素の同位体である炭素12原子の質量の12分の1で、核子(陽子と中性子)の質量にほぼ等しい。

論文はこちらからご覧になれます