謎にせまる:陽電子‐電子と反対の粒子

コラム

ILC では電子と陽電子を加速して衝突させますが、この陽電子とはなんでしょうか。

アインシュタインの相対性理論が正しいことが認識され始めた1928 年、ディラックは電子の運動方程式を相対性理論にあわせて書き直すことに成功しました。この方程式は大成功をおさめましたが、通常の粒子を意味する正のエネルギーの解のほかに、「負のエネルギー」を持つ粒子の存在を予言し、物理学者はその解釈に困りました。

4 年後の1932 年、アンダーソンが電子と同じ重さを持ち、電荷が反対の粒子、陽電子を宇宙線の中から発見しました。ディラックが予言した負のエネルギーは陽電子の存在と密接に関わっていたのです。現在では加速器の中で加速した粒子を金属標的にあてて陽電子を大量に作り出すことができます。