記者会見で提言を発表する日本創成会議 座長 増田寛也氏 画像提供:日本創成会議
7月12日(金)、「日本創成会議」が第2回提言を発表した。日本創成会議は、政策、経済、産業界労使や学識者など、各界の有識者で構成される組織。日本創成会議は、10年後の日本全体のグランドデザインを描き、その実現に向けた戦略を策定すべく、国民の立場から提言を発信し「新しい日本」を創るための国民的議論を興すことを目的としている。座長を務めるのは、元総務大臣の増田寛也氏である。
今回の提言の柱は、次の2本だ。
提言1日本は、地方都市をグローバル都市に変革し、東京以外にも世界から人材・資本を集めることができる都市をつくり、地域主導で成長する国づくりを目指すべきである。
提言2日本が有力候補である国際プロジェクトILC(国際リニアコライダー)の国際機関としての実現を通し、地方都市の改革に取り組み、グローバル都市創成のモデルを構築すべきである。
現在、少子高齢化などにより、日本社会にはびこる閉塞感を打破するためのキーワードとして挙げられているのが「内なるグローバル化」だ。これは、日本を立て直すために、グローバルな視点を持って、地方の立て直しを図るべき、とする考え。日本にILCが建設されるとすると、その立地は地方都市になる可能性が濃厚だ。そこには「グローバル都市」が誕生する。「日本政府、地方自治体ともに、将来展望が描けずに悩んでいる。ILCの誘致を契機として再生の道を企図すべきでしょう」と増田氏は語る。
今回の提言を出す時に最も着目したのは、ILCが出来ると、世界の最先端の研究をしている知的水準の高い人々が、そのそばに住んで研究する、ということだと増田氏は語る。「こんなチャンスは2度とないでしょう。ILCが日本に誘致できれば、それを契機にグローバル都市の形成が可能になる。ぜひ誘致をすすめたいと考えています」。
増田氏は提言の発表後、各界から前向きな反応を受け取ったという。「経済界のトップも含め、政官界、地方自治体などから反応、問い合わせがありました。次の国家戦略の柱とし取り入れるべきだという声もありました」。このポジティブな反応につながった要因のひとつが、提言発表の一週間前に大きな話題となった、欧州合同原子核研究機関(CERN)が発表した、ヒッグス粒子と見られる新粒子の発見だった。CERNの発表があったことで、加速器が何か、ヒッグス粒子の発見にどのような意味があるのか、については説明不要だったのだ。「現在稼働中の大型ハドロンコライダー(LHC)の後継となる加速器の意義や必要性が受入れられやすい土壌となったのです」。しかし増田氏は、これを「ラッキーなこと」だという。ILCの知名度は、まだまだ低いからだ。増田氏は「広く一般からの理解を得るためには、まだまだ努力の余地があります。ILCで何を究めようとしているのか、それだけのお金をかける必要があるのか。世界全体でどんな研究を進めようとしているのか、ILCが人類にどのように貢献できるのかを、科学者が世界に示して欲しいです」と、研究者による解りやすいILCの説明と広報活動に期待を寄せる。
「日本創成会議では、この提言を柱にILC計画を後押しする大きな流れを作ることを狙って、活動を強めていきたいと思います」。日本の有識者からの強力なバックアップを受け、プロジェクトはまだ一歩前進したと言えよう。