4 月30 日、米国ワシントンDC 市内のホテルに、日米両国の政産官学の代表が集まり「日米先端科学技術シンポジウム」が開催された。日本からは、河村建夫議員、塩谷立議員、増田寛也日本創成会議座長が参加し、講演やパネル討論を行ったほか、同日に開催された第12 回日米合同高級委員会に出席していた下村博文文部科学大臣も会場に駆けつけ、来賓挨拶を行った。
リニアコライダー活動を推進する国際組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」のILC 担当ディレクターのマイク・ハリソン氏による開会挨拶の後、河村氏が基調講演を行った。「今日は、リニアコライダー国際研究所建設推進超党派議員連盟(議連)の会長として、日本のメッセージを届けに来た」と河村氏。同議連は、平成20 年設立。現在150 名を超える国会議員の参加があり、ILC の推進に向けて様々な活動が行われている。高エネルギー加速器研究機構(KEK)にも、多くの議員の方が視察に訪れている。河村氏は、ILC を、日本が国を開くという観点で「これだけ魅力的な計画はない」と評価。「新たな日米欧を中核とする多国間パートナーシップをILC 計画をモデルに立ち上げたい」と語った。
続いて講演を行った米エネルギー省(DOE)のダニエル・B・ポネマン長官代行は大型科学プロジェクトについて「財務的、技術的資源を要するもので、一国では実現できないが、大きな結果をもたらす」としたうえで、米国のILC 計画への参加については「わが国の予算の現実を慎重に考慮しなければならないが、ILC計画における日本の国際協力を心から歓迎する」と述べた。
下村文科大臣が参加した、同日午前中に行われた日米合同高級委員会では、イノベーションのための産学連携の有効性が再確認され、様々なプログラムを通じた両国の協力の可能性を追求することが合意されたことから、下村氏は「両国の産業界を巻き込み議論する本シンポジウムは、時期を得たものである」と述べ、ILC については「国際協力の下で各国が役割を分担しなから進めることが肝要である」との見方を示し、また「日本では国内候補地の評価が科学的見地から行われている」ことを紹介した。
増田氏は、ILC 計画に関する日本国内の現状を報告するとともに、今必要とされているものは、国際社会からの「人類の未来のためにILC が必要であるという強いメッセージ」だとし、「皆さんの声が日本政府、国民さらには世界を動かす契機になる。日本と一緒にILC を進めたいというメッセージを是非頂きたい」と呼びかけた。
後半のパネルディスカッションには、塩谷議員、増田氏に加え、鈴木厚人KEK 機構長、ジム・シーグリストDOE 物理学局ディレクター、ニック・サミオス理研BNL 研究センター名誉ディレクター、LCC の米国地域ディレクターのハリー・ウィーツ氏が参加した。
パネルディスカッションの参加者は、これまでの科学技術や加速器科学に置ける日米協力について振り返り、協力関係の継続と発展の重要性が共有された。塩谷氏は「日米の専門家がこれだけ多く集まって議論を行うことが出来て有意義であり、また同日にアンブレラ協定での新たな合意が出来るなど、画期的な前進があった。政治の立場から、連携のルールづくりなどに取り組みたい」との決意を表明した。日米の30 年にわたる科学技術における協力関係は、この日、新たにスタートを切ったと言えるだろう。
このシンポジウムに先立ち、3 月27 日には、LCC の代表、リン・エバンス氏が、小柴昌俊氏(2002 年ノーベル物理学賞受賞者)、河村建夫氏(議連会長)、塩谷立氏(議連幹事長)、村山斉氏(LCC副ディレクター)、鈴木厚人氏(KEK 機構長)、山下了氏(ILC 戦略会議議長)と安倍晋三内閣総理大臣を表敬。加速器科学における日本の貢献や、欧・米など世界でILC 日本誘致への期待感が高まっている状況等を説明した。安倍総理は、ILC を「人類全体にとっての大きな意義のある計画」であると評価し「国際計画であることを鑑み、慎重にその動向を見ながら検討していく」と述べた。
国際協力でのILC 実現にむけた取組みは、着実に前進しているということができるだろう。