POSIPOL 2016@オルセー出張報告記  大森 恒彦 (KEK 講師)

コラム

9月14日〜16日の3日間、パリ郊外のオルセーにある線形加速器研究所 LAL (*1)で開かれた小さな国際会議 POSIPOL 2016 に参加してきた。

p1640245パリには2つのオルセーがある。一つは有名なオルセー美術館のあるパリ市内のオルセー、もう一つはパリの中心部から高速鉄道 RER (*2)で南西に 40 分くらい乗ったところにある小さな町である(綴りは両者とも Orsay)。この高速鉄道 RER のオルセー駅の近くに、パリ11大学(パリ南大学)のキャンパスと線形加速器研究所が隣接して存在しており、ミニ学園町といえる雰囲気をかもし出している。

POSIPOL は 2006 年に始まった国際会議で ヨーロッパ、アジア、アメリカの各地の大学や研究所が持ち回りでホストしている。出席者は回によって異なるが 20 数人から50人弱程度の小規模な国際会議である。日本でもこれまで 2008 年に広島、2010年につくば、2014 年に一関で開かれた。POSIPOL はフランス語の POSITONS POLARISÉS (偏極した陽電子)から取られており、この会議は ILC と CLIC の偏極陽電子源を主な議題として 2006 年に第一回目が CERN で開かれた。CERN 研究所はスイスのフランス語圏とフランスの国境をまたいでおり、研究以外の日常言語はフランス語であるところから会議の名前もフランス語をベースに決められたものである。

会議の話題は回を重ねるにつれて偏極していない陽電子源や、X線源、ガンマ線源なども含むようになりバラエティが広がっている。また近年は出席者の半数程度が ILC の陽電子源グループの人間という事もあり、ILC 陽電子源関係の議論が多く ILC 陽電子グループミーティングのような役目も果たしている。今年は POSIPOL 11 年目ということもあり、初日は研究所副所長の挨拶と参加者への事務連絡の後は、POSIPOL 会議の創始者の一人である CERN のルイス・リノルフィ氏の過去10年間を振り返る講演から始まった。講演後の質疑応答では11回の会議を一回も欠かすことなく出席したのは誰?という話題になり、広島大の栗木さんと筆者の2人が皆勤であることがわかった(ただし皆勤賞はなし)。

初日の途中にはいきなり非常ベルが鳴り響き予告なしの避難訓練があり、会議の参加者も LAL 研究所の職員全員と一緒に避難し、敷地内の広場に集まった。KEK でも年に一回くらい同じような訓練を行っており、ところ違えどやることに大差なしである。会議では ILC の陽電子源の残された課題についても、多くの発表や議論があった。陽電子源が収まる ILC 中央部は多くの機器が設置され非常に複雑な部分であるが、この部分に関しては会議期間中に本会議とは別に関係者が集まり、細かい打ち合わせと今後の検討の進め方の議論を行うことができ、大変有意義であった。

筆者はパリ市内に宿を取り3日間会議に通ったが、パリは警備が厳重で、あちこちに自動小銃をもった軍の兵士がおり、また警察官でも自動小銃をもっている者もいた。ちょっと大きなショッピングセンターでは、入り口に警備員がいて中に入る人全員のカバンを開けて検査していた。最終日の終わりには主催者が「この1年色々なことがあって誰も来てくれないかと心配していたが、皆んな来てくれてありがとう」と挨拶し、フランスにとってテロが切実な問題になっていることが感じられた。

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