加速器・物理合同ILC夏の合宿2017@乗鞍高原 竹下徹(信州大学) 

コラム

宿舎および開催場所の乗鞍高原 鈴蘭小屋の前で集合写真。

ILC夏の合宿は、2010年以来8回目の、毎年日本各地で夏に開催されている3泊4日の合宿です。今年は、7月21日(金)午後~23日(月)午前まで開かれました。場所は、最近は温泉付きの宿が選ばれています。今まで巡った温泉地名をリストします。今年は、信州大学が幹事校なので、すずしい高地の温泉という事で乗鞍高原を選びました。

2017年 乗鞍高原温泉 (松本市)幹事校 信州大学
2016年 厳美渓温泉 (一関市)幹事校 岩手大学
2015年 伊香保温泉 (渋川市)幹事校 東京大学
2014年 関金温泉 (倉吉市)幹事校 広島大学
2013年 呉羽ハイツ(富山市)幹事校 富山大学
2012年 武雄温泉 (武雄市) 幹事校 佐賀大学
2011年 志賀高原幕岩温泉(山ノ内町) 幹事校 信州大学
2010年 鎌先温泉(白石市) 幹事校 KEK

とはいえ、合宿としての魅力は、
加速器科学、素粒子理論、素粒子実験の研究者や大学院生が同じ宿に集まり、昼も夜も(夜の部があります)講演と議論を行う点にあります。夜の部では、お酒も入って時間制限がほとんどありません。なにしろ講演者と参加者の乾杯から話が始まります。話は大学院生向けの教育的な講演や、まとめ的な話、今日的な研究や計画の話、大学院生の研究紹介など盛りだくさんです。今年の個別のお話は次のURLにあります。

開催趣旨にあるように、加速器、素粒子理論、実験の力をあわせて ILC国際リニアコライダーを実現し、そこでの研究を進めようという考えで開かれています。
以下は開催趣旨です、
・加速器科学者、素粒子・高エネルギー物理学者の間で情報共有を行い、国際リニアコライダーにつ いての共通認識を作ること。
・国際リニアコライダーを実現し、さらに研究分野全体の発展のため、異分野の研究者同士の信頼関係を築き、若手研究者間の交流をうながすこと。

さて今回の乗鞍高原温泉のハイライトは、ILC加速器をヒッグス粒子ファクトリーとして位置づけて実現を目指す事でした。LHC加速器実験の結果、ヒッグス粒子が発見された事は記憶に新しい画期的進展でした。その後期待された新粒子の発見がない事は、ますますヒッグス粒子というまだまだ解らない事の多い、質量起源粒子を研究することの重要性を高めています。電子陽電子衝突実験は精密で高い精度の実験結果をもたらします。今ヒッグス粒子工場としてILCを位置づけて研究を進める事は時代にかなった計画といえます。

多くの講演では、ヒッグス粒子に関連した研究成果が発表され、議論がかわされました。特に素粒子理論の研究者と加速器科学や素粒子実験の研究者が共に同じテーマで議論あるいは意見交換をする機会は多くなく、貴重な時間であったと思います。ILC計画への青信号は世界中の研究者が待ち望んでいる事で、数年内での日本国政府の意思決定がなされる事を期待します。

もう一つのハイライトは、せっかく乗鞍岳近くに来たので、土曜日の午後は講演をなしにして、遠足として乗鞍山頂(畳平)に出かけました。特に若い学生さんたちに、ILCの面白さと気合いが伝わって有意義な合宿となったと思っています。