ドイツ連邦議会のステファン・カウフマン議員が10月末に来日し、ILC計画実現に向けた政治レベルでの非公式な日独協議、ILC建設候補地となっている岩手県の視察、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の視察など、多忙な3日間の活動を行った。2017年10月の国際会議LCWS2017でのカウフマン議員の講演を覚えておられる方も多いだろう。カウフマン議員は日本のリニアコライダー国際研究所建設推進議員連盟(ILC推進議連)の主要メンバーらが1月に訪欧した際の協議に参加し、欧州側の調整役を担っている。今回の訪日には、国際将来加速器委員会(ICFA)前議長でドイツ電子シンクロトロン(DESY)のヨアヒム・ムニック素粒子・宇宙素粒子物理ディレクターと、フランスのサクレー研究所のマキシム・ティトフ博士、そして九州大学の川越が同行した
11月29日朝に羽田に着いたカウフマン議員は、その日の午後、議員会館を訪問してILC推進議連の塩谷立幹事長、鈴木俊一議員、伊藤信太郎議員らと意見交換を行った。その後は場所を変えて、先端加速器技術推進協議会の西岡喬会長、東北ILC推進協議会の高橋宏明代表など、ILC計画を推進する日本の経済産業界の方々との意見交換を行った。
2日目は東北新幹線で東京から岩手県一関市に移動した。昼食会で達増拓也岩手県知事、谷村邦久岩手県ILC推進協議会会長らと意見交換を行った後、ILC加速器の建設候補地とされる地域の視察を行った。その途中で、多くの地元報道関係者の取材を受けている。視察の最後に世界遺産の平泉見学(中尊寺金色堂)が組まれており、慌ただしくはあったが日本文化を味わっていただく機会があった。
3日目(最終日)はKEKの視察が組まれた。山内正則機構長、岡田安広理事との意見交換の後、SuperKEKBとBelle II実験、そしてILC加速器の開発施設であるATFとSTFの見学を行った。Belle-II実験の視察の後では、ドイツの若手研究者・大学院生との懇談の時間が設けられ、活発なやりとりがなされた。
今回のカウフマン議員の訪日で、日本における政・産・学、そして自治体のILC実現に向けた熱意と準備状況が正しく伝えられたと思う。そして、欧州主要国であるドイツのILCにかける期待も再認識させられた。日本政府がILCの日本誘致への強い関心と国際協議開始の意向を表明すれば、それから国際的な役割分担に向けた政府間の正式な協議が始まる。だろう。ILCの建設承認には、各国との協議がまとまることが必要であるのはもちろんのことであり、そのための布石として、重要な3日間であった。