ICFA会合を開催 ILCに関する国際的な意見交換を継続

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7日に行われたプレスブリ-フィングの様子

 

 

3月7日(木)、8日(金)の2日間、国際将来加速器委員会(ICFA: International Committee for Future Accelerator)が東京大学で会合を行いました。世界の主要高エネルギー物理・素粒子物理研究所の所長など、40名が参加し議論が行われました。

LCBのセッション

7日の午前に行われた、リニアコライダー国際推進委員会(LCB: Linear Collider Board)のセッションには、文部科学省から出席した磯谷桂介研究振興局長が、文部科学省は現時点で国際リニアコライダー(ILC)の日本誘致を表明するには至らないとしたものの、この計画に関心を持って国際的な意見交換を継続するとの方針を述べました。

磯谷局長の発言要旨は以下の通りです。

国際リニアコライダー(ILC)計画に関する見解

【要旨】
2019年3月7日
文部科学省研究振興局

○ 日本学術会議の所見を踏まえ、現時点で日本誘致の表明には至らないが、国内の科学コミュニティの理解・支持を得られるかどうかも含め、正式な学術プロセス(日本学術会議が策定するマスタープラン等)で議論することが必要である。

○ 国外においても、欧州素粒子物理戦略等における議論の進捗を注視する。

○ ILC計画については、日本学術会議の所見で課題等が指摘されている一方、素粒子物理学におけるヒッグス粒子の精密測定の重要性に関する一定の学術的意義を有するとともに、ILC計画がもたらす技術的研究の推進や立地地域への効果の可能性に鑑み、文部科学省はILC計画に関心を持って国際的な意見交換を継続する。

2012年、ILC計画を推進する日本の研究者グループは、日本政府に対してILCの日本誘致を要望しました。文部科学省においては有識者会議を設置して、科学的意義、コスト及び技術的成立性、人材の確保・育成方策、体制及びマネジメントの在り方等の観点から検証を進め、その後、日本学術会議の所見の内容も精査しつつ、ILCに関する意義や効果について検討が行われました。これは、世界の研究者コミュニテイに対して、初めて日本政府の見解が示されたという意味で、ILC計画にとって重要なマイルストーンとなるものです。

また、会議前日の6日(水)には、歓迎夕食会が都内のホテルで行われ、リニアコライダー国際研究所建設推進議員連盟より河村建夫衆議院議員、塩谷立衆議院議員、鈴木俊一衆議院議員、伊藤信太郎衆議院議員が来賓として出席されました。

河村議員は祝辞の中で、2013年以来日米の議会・政府間における関係強化が進められてきたこと、昨年、政・産・学の連携により、フランス・ドイツの議会および政府との対話が開始されたことを紹介。具体的な国際的議論を始める段階になっているとの考えを示されました。また、コストについては、ホスト国が担うことが適切な部分と、国際的な分担が適切な部分とを切り分け、技術的に確実なパートナー国で役割分担し、着実に計画を進める必要性を指摘。具体的な分担のたたき台を作るために、世界の研究者に対して協力を呼びかけました。 河村議員祝辞全文

7日の夕方に行われたプレスブリ-フィングで、中田達也LCB委員長は、直接、世界の研究者に向けて、日本政府の立場が示されたことに深く謝意を表するとともに、日本におけるILC推進関係団体の努力にも謝辞を送りました。

ジェフリー・テイラーICFA議長は、2012年のヒッグス粒子の発見以降、素粒子物理分野の第一の課題はヒッグス粒子の詳細研究であり、ILCはそのために不可欠な加速器であることを強調。「ILCに科学的な意義があるのは明らか」と述べ、ICFAは引き続きILCの推進を続けていくとしました。また、「政府の各段階で議論が行われていることが確認でき、勇気付けられた」と述べ、早期の誘致表明を得て、ILC建設開始ができることに期待を表明しました。

昨年12月、文部科学省からの審議依頼に基づき回答した日本学術会議の所見においてはILCの実験に一定の科学的意義を認める一方で、技術的な課題や国際的な経費分担等への懸念が指摘されていました。

山内正則KEK機構長はプレスブリ-フィングの中で「学術会議からの指摘事項のうち、技術的問題はすでに回答を持っている。また、国際的な費用分担については、まさにこれから枠組みを作っていくところであり、理解が得られると考えている」と述べました。KEKは、今回の文部科学省からの発表に基づいたILC推進の指針をまとめ、発表する予定です。

用語

ICFA:国際将来加速器委員会(ICFA:International Committee for Future Accelerators)は高エネルギー物理研究に用いる加速器の建設と運用における国際協力の促進を目的に設立された組織。 高エネルギー物理研究に関与する世界各地の専門家から構成されており、現在の委員は 18 名。

LCB:リニアコライダー国際推進委員会(LCB: Linear Collider Board)。ICFA の下部組織で、ILC の加速器及び測定器に関する研究開発活動と計画推進の活動を行うリニアコライダー・コラボレーション(LCC:ディレクター リン・エバンス)を監督する。

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