国際原子力機関IAEAが主催する、加速器研究と持続可能な発展に関する国際会議(International Conference on Accelerators for Research and Sustainable Development: From Good practices Towards Socioeconomic Impact) がオーストリア・ウィーンで5月23日(月)から27日(金)まで開かれました。
開催期間中、様々な加速器研究や持続可能な取り組み事例が発表される中、5月25日(水)のパラレルセッションにて、“Sustainability Studies for Linear Collider”と題してリニアコライダー(ILC/CLIC)における持続可能な加速器設計、リニアコライダーの持続可能性を高めるための取組みが紹介されました。発表はILC国際推進チーム(IDT)欧州代表のSteinar Stapnes氏(CERN)、IDT-WG2(加速器)部会長の道園真一郎教授(KEK)の協力のもと、Benno List氏(DESY)が行いました。
発表の中で、地球村創生ビジョンからエネルギーの再利用や排熱の農林水産業への活用、施設の木造化など、SDGs を先取りした「グリーン ILC」の取組みも紹介されました。
「グリーンILC」とは、2013年から始まったILC加速器の高効率化の取り組みです。
一般的に加速器施設は大量の電力を消費します。ILCは超伝動加速を基礎とする設計のため、従来の常伝導加速方式よりは消費電力を削減することができるとはいえ、ILC実現に向けて電力の削減は非常に重要な問題です。
さらに、電力供給圏内の人々の日常生活に不便をかけることは避けなければならなりませんし,住環境に排熱、騒音、景観などで影響を与えることは最小限に留めなければなりません。
このような問題意識から、ILCの研究者は、ILCを高効率の加速器として実現すると同時に、ILCを取り巻く街とILCとのエネルギーのネットワークを構築し、全体として持続可能かつエネルギーの再活用を目指す「グリーンILC」実現に向けて、国際協力で検討を進めています。まさにSDGsの先取りということができるでしょう。
発表の様子は、AccApp B-M1 – Videoportal (iaea.org) <http://streaming.iaea.org/21901> から視聴できます。(3:24:00位から)