ILCの物理学 左巻き電子 右巻き電子

ILCの物理学

左巻き(上)と右巻き(下)のスピンをもつ電子©︎ ひっぐすたん

電子は自転しているかのような「スピン」とよばれる固有の性質を持っています。電子のスピンは、極めて重要な性質です。 たとえば、原子がその大きさを保っていられるのは、電子のスピンの効果です。 もし電子にスピンがなければ、私たちの体はつぶれてしまいます。

電子には進行方向に対し左まわりにスピンしている「左巻き電子」と右まわりにスピンしている「右巻き電子」の2種類があります。ILCではこの2つの電子の性質の違いを実験に利用することを計画しています。 

素粒子の精密測定を行うときに邪魔になるもののひとつに「弱い力の影響」があります。弱い力を伝える重い素粒子が反応するのは左巻き電子だけ。ですから、右巻き電子だけで実験すれば弱い力の影響は排除できます。通常は左巻き電子と右巻き電子が混じっていますが、ILCは高い割合で右巻き電子を衝突させることが可能で、余計な反応が起こらないとても精密な実験ができるのです。これは、ILCのエネルギー拡張性(ILC News7月号で解説)とならび、ILCが持つ大きな利点といえるでしょう。