※この記事は、2025年1月30日に発行されたILC Newslineディレクターズ・コーナーの翻訳記事です。
本年初めて発行するニュースラインとなるため、まずは皆さんに新年のご挨拶を申し上げます。今年は、素粒子物理学の将来に関わる重要な動きが予定されています。その一つが、欧州戦略グループによる「素粒子物理学将来欧州戦略」のアップデートに向けた会議で、12月に開催が計画されています。これにより、2025年は刺激的で忙しい一年となるでしょう。
今回の戦略更新では、CERNにおける次世代のフラッグシップ加速器が大きな焦点となります。これは、世界の素粒子物理学プログラム全体に大きな影響を及ぼすため、欧州がグローバルな視点で戦略を策定する上で、他地域からのインプット、特に現在検討中の大規模加速器プロジェクトに関するインプットが極めて重要となります。
そこで、ILC国際推進チーム(IDT)は、以下の内容を含む文書を提出する予定です。
– ILCテクノロジーネットワーク(ITN)ととともに進められているILCプロジェクトの技術開発の現状
– ILC-250(250GeVで運用される加速器)の最新費用見積もり
– ビーム搬送系の追加や、エネルギーを500GeVまで引き上げるための追加コストの概算
– 日本の高エネルギー物理学コミュニティが推進する、ILC実現に向けた計画
ILCプロジェクトは250GeVの加速器に焦点を当てていることから、LC Visionの取り組みでは、線形加速器の特長を最大限に活かした一貫したロードマップが策定されています。これは、先日CERNで開催された会議(本ニュースラインでJenny List氏とSteinar Stapnes氏が報告)でも示されたとおりです。このロードマップでは、まずコストを抑えつつ十分な物理性能を備えたヒッグス(場合によってはトップ)ファクトリーとしてスタートし、その後、並行して進められる研究開発の成果を活用しながら、エネルギーを1TeV以上に引き上げ、さらにルミノシティを1~2桁向上させることが提案されています。
また、この初期加速器の基盤技術としてSRF技術を採用した線形加速器施設をCERNに提案する取り組みも進行中です。この施設は柔軟性に富み、電子・陽電子(e⁺e⁻)物理にとどまらず、より幅広い科学プログラムを取り込むことが可能であり、次世代の高エネルギー加速器建設にも適したものとなっています。IDTはこの動向を注意深くフォローし、加速器に関するIDTワーキンググループ2(WG2)および物理・検出器に関するワーキンググループ3(WG3)の活動と相乗効果を図りながら貢献していきます。
執筆者:ILC国際推進チーム(IDT)中田達也議長
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