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VXDインストール作業の様子。

VXDインストール作業の様子。

2018年11月21日、Belle IIに搭載する最後の測定器である崩壊点検出器(VXD)のインストール作業がKEK筑波実験棟で行われました。VXD本体の設置作業は21日中に終了し、本運転(phase3)に向け順調に準備が進んでいます。

Belle II実験は、大量のデータを用いて様々な物理量を精密測定する事で標準理論から予想される結果とのズレを捕らえ、理論モデルの検証や新物理の発見を目的としています。そのため、SuperKEKB加速器は衝突性能で加速器世界最高を目指し、Belle IIはそこからの大量の素粒子反応データを記録します。

今回インストールされたVXDは、B中間子(注)が崩壊した場所を測定するための検出器です。崩壊点は、B中間子が崩壊して生成された粒子の飛跡を再構成し、交点を見つけることで測定します。世の中のほぼ全ての物質は第一世代の素粒子であるアップクォークとダウンクォーク、電子で形成されており、第二世代以降の素粒子は崩壊して第一世代のものに遷移します。Belle II実験では、第三世代の素粒子であるボトムクォークを含むB中間子を用いて崩壊による粒子の遷移の仕方を測定します。そこから物質と反物質で遷移の仕方に違いがあるのか調べ、現在の宇宙に反物質が存在しない謎に迫ります。

クリーンルームから運び出されたVXDとプロジェクトメンバー。VXDはクレーンでBelle II測定器本体付近まで移動させた後に、手作業で本体に固定されます。

クリーンルームから運び出されたVXDとプロジェクトメンバー。VXDはクレーンでBelle II測定器本体付近まで移動させた後に、手作業で本体に固定されます。

VXDは衝突点部のビームパイプを取り囲むようにピクセル検出器(PXD)2層、シリコンストリップ検出器(SVD)4層の合計6層の検出器から構成されています。VXDはドイツ、オーストリア、日本、イタリアを含めた10カ国以上の国際チームが開発を進めてきました。PXDはBelleの時代には搭載されていない検出器で、Belle IIで初めて導入されます。そのためBelleと比べてB中間子の衝突点の測定精度は倍程度改善します。

VXDとプロジェクトメンバー。中央にPXDがあり、その外側に4層SVDが搭載されています。

VXDとプロジェクトメンバー。中央にPXDがあり、その外側に4層SVDが搭載されています。

Belle II実験のプロジェクトマネージャーである後田裕教授は、「ここまで苦労したが、一体のものとしてインストール出来てよかった」とコメントしました。

21日のインストール作業では、VXDをBelle IIの中に固定させる段階まで完了しました。今後はケーブル等を接続し、12月上旬〜中旬頃からVXDの運転を開始する予定です。初めは宇宙線を用いて、12月20日までVXDの試運転を行います。その後、エアロゲルRICHカウンター、電磁カロリメーターの合体や衝突点用超伝導電磁石の接続等を行い、3月11日からBelle IIの本運転(phase3)を開始する予定となっています。

(写真の提供:KEK広報室、KEK Belle VXDグループ)


用語説明

(注) B中間子

第三世代の素粒子であるボトムクォークと、反アップクォークまたは反ダウンクォークが結びついてできたもので、π中間子の仲間ですが陽子の5倍ほどの質量があります。SuperKEKBでは、7GeVの電子と4GeVの陽電子を衝突させてB中間子・反B中間子対を生成させます。

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