COMET実験用パイオン捕獲ソレノイドの設置完了

J-PARCでは、ミューオン-電子転換過程の探索を行う、COMET(COherent Muon to Electron Transition)実験を推進しています。この実験では、パイオンおよびミューオンを捕獲、輸送するために、超伝導磁石が重要な役割を果たしています(図1)。COMETの超伝導電磁石は大きく3つの部分に分かれており、1次ビームである陽子をターゲットに当てて生成されるパイオンを捕獲してビームラインに取り込むための捕獲ソレノイド、パイオンおよび崩壊して出てくるミューオンを検出器まで輸送する輸送ソレノイド、ミューオンが崩壊して出てくる粒子を識別するための磁場を発生する検出器ソレノイドがあります。共通基盤研究施設では、素粒子原子核研究所と協力して、本実験用超伝導磁石の設計、試験、設置に当たっています。

パイオン捕獲ソレノイドは、超伝導磁石の中で最も大きく(外径2.4m、長さ6.5m)最も磁場の強い磁石(最大磁場5T)です。2018年からコイル製作を開始、2020年度からコールドマスおよび真空容器などの全体組立が行われ、2024年10月に実験ホールへ納品されました。その後、リークチェックや信号線確認などの受入試験の後、2025年1月に、所定の位置への移動および下流側にある輸送ソレノイドとの連結を完了しました(図2)。今後は、地上部の冷却システムと地下の磁石を接続するための配管施工などを進める予定です。

図1:COMET実験用超伝導磁石システム全体図
図2:COMET実験用超伝導磁石システム 2024年12月現在