9月には国際リニアコライダー(ILC)の重要な会議が相次いで高エネルギー加速器研究機構(KEK)で開催されました。20日から22日にかけて開かれたILC加速器諮問委員会(MAC)は、ILCの国際共同設計チーム(GDE)の活動を国際リニアコライダー運営委員会がレビューするために設けられました。委員にはジェイ・プサイ粒子の発見でノーベル賞を受賞したバートン・リヒター博士など、世界の著名な物理学者が名を連ねています。2回目となる今回の会議では、発足から1年経ったGDEがILCの設計をどのように進め、建設に必要な予算を算出しているかについての活動内容を精査し、コストダウンのための設計変更などについての助言を行いました。
25日から28日にかけては超伝導加速器技術会議(TTC)が開かれ、世界中で超伝導加速器の開発に携わっている加速器科学者101名がKEKに集まりました。この会議はドイツで提唱されていた「TESLA」という超伝導加速器の技術開発のための情報交換の場として始まりましたが、現在ILCはもちろん、X線自由電子レーザーやエネルギー回収型リニアック、大強度加速器等、世界の様々な超伝導加速器の関係者が集う会議となっています。
「この会議をKEKで開催したことは、科学者がアジアの加速器技術の現状を理解するよいきっかけとなりました」と、DESY所長のアルブレヒト・ワグナー博士は述べました。「DESYではFLASHという超伝導加速器がすでに稼働していますが、この加速器の運転中の時間を工夫することで、ILC建設に向けた有益な試験を行うことができます。」
14年前からKEKの浦川順治氏とともに先端加速器試験装置(ATF)での研究開発に携わっている米国フェルミ研究所のマーク・ロス博士は次のように述べました。「性能の良い超伝導加速空洞を安定的に大量生産するには、超伝導材を化学的な洗浄研磨するプロセスを正確に理解することが不可欠です。KEKはこの分野で世界をリードする研究を続けています。この会議で世界の研究者が最先端の洗浄研磨プロセスを正しく理解することがとても重要です。」ロス氏はKEKとの共同研究を通じて、米国人が海外で研究活動を進めるための障害を乗り越えてきた経験がフェルミ研究所で国際チームを立ち上げる際にとても参考になったとも述べています。