「加速」と聞くと皆さんは何を思い浮かべますか? インターネットで「~が加速する」という語句の使われ方を検索してみると、物事が変化する様子が時とともにどんどん激しくなるような状況で使われていることがわかります。
加速器は粒子に速度を加える装置です。米国のローレンス博士が1930年に作った世界初の加速器、サイクロトロンは直径が14 cm。手の平にのる大きさです。しかし現在の世界最大のLHC加速器は直径が9kmもあり、もはや「器」と呼べる大きさではありません。しかし、相変わらず「加速器」と呼ばれています。
粒子を光の速度近くまで加速すると、粒子にいくらエネルギーを与えても、その速度はほとんど変化しなくなります。しかし、粒子の持つエネルギーは、大きくなるため、研究者は粒子の勢いを速度ではなくエネルギーで表します。この時、よく使われる単位が「電子ボルト」。これは、電子を1ボルトの電圧で加速した時に電子が受け取るエネルギーのことです。
図のように、穴の開いた金属板を乾電池につないでその中に電子を打ち込むと、マイナスの電気を帯びた電子はプラスの電極に引き寄せられます。乾電池の電圧は1 . 5ボルトなので、この時、電子が乾電池からもらった(加速された)エネルギーは「1 . 5電子ボルト」ということになります。
ILCが目標とする電子と陽電子の最高エネルギーは5千億電子ボルト。乾電池でこのエネルギーまで加速しようとすれば、電子と陽電子でそれぞれ3千3百億個、あわせて6千6百億個の乾電池が必要になる計算です。全部を一列に並べると地球を800周以上してしまいます。