技術的実現可能性の研究

ILC ニュースライン

2014年以来日本の文部科学省は、国際リニアコライダー(ILC)を日本が誘致することに対する意思決定に関わる情報収集のための研究を進めてきた。この目的のために文部科学省によって設立されたILCに関する有識者会議によるまとめの報告書の概要はニュースライン前号掲載されている。

文部科学省は、この文部科学省内部委員会に加え、ILCの技術的・経済的波及効果を見極めるための追加研究を第一段階の委託調査として日本屈指のコンサルタント会社の一つである野村総合研究所(野村総研)に委託している。野村総研の報告書は、現在日本語のみで入手可能であるが、我々は英語翻訳版が準備中であるとの報告を受けている。

ごく最近、文部科学省は二つの新しいイニシアチブを立ち上げた。一つ目はILCの建設及び運転に必要な人的資源の研究のためにもう一つ別の内部委員会を設置すること。我々は本件については文部科学省に要求された全ての情報を提供している。 二つ目の新しいイニシアチブは、プロジェクトの技術的実現可能性とILC加速器の建設がもたらす技術的課題を調査分析する更なる研究を野村総研に委託することである。この研究の主な構成要素は次の通りである。

1. ILC加速器の技術的実現可能性の調査
2. ILC加速器に必要となる構成部品の大量生産を管理するために克服が必要となる技術的問題点の調査
3. 費用を低減する方法の調査

この研究の一部として野村総研は今秋に欧州及び米国の有数の加速器科学研究機関及び加速器の構成部品又は関連製品を製造する会社を訪問する計画である。

これは非常にタイトなスケジュールであり、我々の作業結果をできる限り最高のやり方で提示するためにも全ての研究機関及び会社に協力をお願いするつもりである。特に重要なのは、我々が大型プロジェクトを産業界と共同で手掛けていくことができるということを示すことである。大型ハドロン衝突型加速器(LHC)、ドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)で現在建設進行中の欧州X線自由電子レーザー(XFEL)施設、及びスタンフォード線形加速器センター(SLAC)の線形加速器コヒーレント光源の改良型(LCLS-II)はこのことに対する十分な証左をもたらすであろう。 この委託調査分析の最終報告書は2016年2月までには入手可能となろう。日本政府が本プロジェクトを次の段階に進めることを決断し、潜在的パートナーとの国際交渉を開始するために文部科学省が必要とする情報がこれで十分となることを望む。  

原文

[図のキャプション]
フランスのサクレー研究所(CEA)における欧州X線自由電子レーザー向けクライオモジュール製造の様子
イメージ:ドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)2015