LHC 第二期の結果が示す道筋

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時間が経つのがますます速くなっているような気がする。国際リニアコライダー・ワークショップ、LCWS2015がブリティッシュ・コロンビア州ウィスラーで開催されてからもう1ヶ月以上経つ。これは、(ドナルド・ラムズフェルド発言を言い換えていうと)「知っていると知っていること」、即ちヒッグス粒子とトップクォークの物理学を探究することだけではなく、「知らないと知っていること」、即ちおそらく超対称性又はその他の人類の思い付く賢明な考えが自然において具現化されたようなものを示す、間違いなくあるであろう標準模型を超える物理学への準備をすること、そして「知らないことすら知らないこと」、即ち原子以下の物質と自然界の力に対する我々の理解においてパラダイムの転換をもたらす可能性のある完全に奇妙で思いもよらないものへの備えをしておくための、我々全世界的なコミュニティによる次世代高エネルギー線形電子・陽電子衝突型加速器の準備への最新のマイルストーンとなった。

同様の文脈で11月CERNにおいて2015年の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)での13 TeVという新たな最大衝突エネルギーでの陽子・陽子衝突実験完了により(重イオン実験は私がこの文章を書いている時点でフル稼働進行中であるが)もう一つの重要なマイルストーンが達成された。私はCERNのLHC委員会(LHCC)に名前を連ね、LHCの実験計画を監視し指導するお手伝いをする機会を与えられるという名誉に預かっている。LHC施設の統合とほぼ2倍増となるビームエネルギーの増強のための2年間の運転停止後の再開となり、2015年は改良機の再始動と再稼働へ慎重且つ献身的な取り組みを要求される、いつもどおりの厳しい年となる予定であった。それにも関わらず、陽子・陽子衝突実験期間の最後には3-4 fb-1のルミのシティがATLAS及びCMSにより記録されることになった。ビームエネルギー増強と組み合わせると、このことは統計的能力における著しい進歩をもたらすデータサンプルと直接的な新しい粒子探索への大探索範囲を意味している。このことは既に、2009年と2012年の間に収集された第一期運転のデータサンプルで得られた結果を大きく超える段階に我々を連れていってくれることになる。特別セミナーが12月15日(2015年)にCERNで予定されており、そこでは実験共同研究グループにより完全な2015年大型LHCデータサンプルが提出される。更には年末の技術上の運転停止(冬期閉鎖)後、LHCが再開となり元の状態に戻れば、機械グループのより一層の努力による輝度増強もあり、2016年及びそれ以降にはこれまでよりはるかに多くのデータを期待することができる。

したがってどういう尺度でも今後数年は、素粒子物理学の全世界的コミュニティにとっては刺激に満ちた年となろう。特にリニアコライダー・コミュニティにとっては、LHCの結果は最適な将来の道筋に向けて我々を導いてくれることになるため刺激に満ちた年となろう。LHCは既に物理学の金張りの能力を保証しており、その王家の宝石(重要な資産)は、数十年に渡る計画で実現される、エネルギーおよそ1 TeVまで及ぶヒッグス粒子とトップクォークの精密測定となる。その他の精密測定と探索は言うまでもない。CLICは、最先端の加速技術に基く電子・陽電子コライダーにより実現可能と現在考えられうるおよそ3 TeVまでの最高度のエネルギーに標準を合わせている。今後数年の間にLHCによってTeV質量スケールにおける新しい重粒子が発見されれば、CLICはそれらを大量に生成し、クリーンな実験環境で鋭利な研究を進める最適な方法になり得るであろう。次のCLICプロジェクトのマイルストーンは1月18日から22日の間にCERNで開催される2016年CLICワークショップとなる。そこでは機器、測定器及び物理研究の状況と計画を、2019年頃となる欧州素粒子物理戦略の次の更新を視野に入れて評価することになる。皆の参加を歓迎する。

最後に、リニアコライダー・コミュニティではスカウトの有名なモットーを心に留めておくべきである。「備えよ常に」… LHCがもうすぐ明らかにすることに対して。
英文 Philip Burrows

原文

[図のキャプション]
LHCは今年(2015年)初めの再稼働以来、記録的なエネルギーである13 TeVで多くのデータを収集している。 イメージ:アトラス実験 © 2015 CERN