STF:KEK で進む超伝導加速技術の実証

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国際リニアコライダー(ILC) に不可欠な技術が「超伝導加速技術」。超伝導加速とは、ニオブ等の超伝導材料でつくられた「超伝導加速空洞」にマイクロ波を送り込んで電場をつくり、電子や陽電子のビームを加速する方式です。-271℃まで冷却すると、ニオブ製の空洞が超伝導状態になり、電気抵抗が生じません。そのため、電力損失や加熱が起こらないため、 空洞の中にマイクロ波のエネルギーを無駄にすることなく効率よく加速することができるのです。

高エネルギー加速器研究機構(KEK)では、空洞の製造・性能試験や、冷却、大電力マイクロ波発生、空洞の保冷、電子ビームの発生など、総合的な超伝導加速システムの研究開発を行っています。それら技術を確認するための総合試験を行う場所が、超伝導RF 試験施設(STF)です。今、STF の地下トンネルには、ILC 仕様のクライオモジュール1.5 本分の設備がつくられています(写真)。このクライオモジュールには空洞のみならず四極磁石も組み込まれており、実機さながらの仕様になっています。

クライオモジュールは、外気の熱を遮断する保冷容器に、ILC の心臓部となる超伝導加速空洞を8~9 台(8 台のものには四極磁石が入る)を入れたユニットモジュールのこと。実際のILC には、このクライオモジュールが約1850 台必要になります。これらは世界で分担して製造されるため、STF と同様の試験施設が米国のフェルミ国立加速器研究所にもあり、実 証試験が行われています。ドイツでは、同じ技術を用いた放射光施設「欧州XFEL」の実用的な運転が始まります。欧州XFEL 建設からは、大量生産の技術や産業化の手法など、ILC の実現に役立つ知識や経験も蓄積されました。STF の試験装置は、ILC の仕様としては最も長いクライオモジュール。2016 年度後半にはビームを通した試験を行う予定となっており、試験に向けた準備が着々と進んでいます。

ILC の超伝導技術は、強い電場を実現して短い距離で大電流のビームを加速できます。この技術は加速器の小型化にも役立てらることができるため、様々な応用が考えられます。例えば、従来の広大な敷地を必要する加速器を、可動式の装置にすることも可能になるため、走りながらトンネルの亀裂を見つける車両型非破壊検査装置や、移動式の医療用治療装置などの開発も期待されています。また、超伝導技術を使った放射光施設の開発は、生命科学研究、ナノ構造解析、創薬、医療診断、マイクロリソグラフィなど、多くの分野へ画期的な波及効果をもたらすと考えられています。

ILC の実現、そして未来の技術応用にむけて、STF では研究者・技術者 が挑戦を続けています。

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