“バンプ”からリニアコライダーを再考する

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2016年のECFAリニアコライダー・ワークショップが、美しいスペインの都市サンタンデールで、5月30日から6月5日まで開催された。リニアコライダー物理学の最新の進展について議論するために、200人を超える実験、理論および加速器分野の研究者が結集した

山内正則KEK機構長は、日本におけるILCホストに関する議論の現状を報告した。現在、文部科学省(MEXT)が設立した3つの委員会は、最終報告書を準備している。しかし、最終的な決定が下されるのは、LHCのラン2の結果が出た後になる。恐らく、決定が下されるのは2018年になるだろう。

山下了東京大学特任教授は、ILCのための国際的なサポート獲得を目指した活動について説明した。MEXTと米国エネルギー省間の二国間協議が「ディスカッション・グループ」の形式でいよいよ動き出し、コスト・シェアリングやガバナンスといった重要な課題について議論するため、定期的に会合を開く。

CERNのリサーチ・ディレクター、エッカード・エルセン氏は、CERNの科学的プログラムについて概説した。最優先事項はLHCの最大限の活用とルミノシティ・アップグレードだ。将来の長期的なオプションについては、おそらく2019年になるであろう次期欧州戦略策定会議に向けて準備中だ。オプションには、超高エネルギー・ハドロン・コライダー(FCC)、LHCのエネルギー・アップグレード、CLICの段階的実施などが含まれる。

科学的な側面では、LHCで新たに観測された750ギガ電子ボルトの共鳴状態と、そのILC実験における意味に関して、多くの議論が行われた。この共鳴が今後数か月の間に確認された場合は、電子陽電子衝突加速器としてのILCの運用に加え、1TeVのガンマ・ガンマ衝突加速器としてもILCを運用するオプションの可能性を積極的に追及することが推奨された。このためには、ILCのレイアウトに小さな修正が必要となるだろう。

加速器開発の側面では、フェルミ国立加速器研究所のグループによって、超電導空洞の窒素ドーピングに関する新しい結果が提示され、大きく盛り上がった。以前、同グループから中庸な勾配におけるQ値の改善が報告されていた。そして今回、単セル空洞で、高いQ値と勾配を同時に改善することに成功した。現在は、ILC用の9セル空洞の試験中だ。これらのテストが成功すれば、ILC設計に重要な効果があるだろう。

このようなワークショップは、特に今のような決断を待つ期間には、コミュニティーをまとめるために重要なものだ。次のワークショップは2016年12月5日から9日まで盛岡で開催される。同会議では、ILCサイト候補地視察も行われる。強力な国際的なサポートが示されることは特に重要だ。そのため、盛岡での会議に多くの参加者があることを期待している

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