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ILC ニュースライン

ILC計画のいろいろな段階(イメージ: Rey.Hori)

 

ここ数ヶ月間、LC ニュースラインはどうなっているのだろう、と思っていた方も多いかもしれません。その説明をする前に、バリー・バリッシュ氏の2017年ノーベル物理学賞受賞を心よりお祝いしたい。
ニュースライン休止中に、ILCにはいくつかの進展があった。中でも最も重要なのは、250ギガ電子ボルト(GeV)の「ヒッグス・ファクトリー」としてのILC加速器のメリットについて、コミュニティで深い議論を行ったことだ。この加速器は最大40パーセントのコスト削減が見込めるうえに、将来的なより高いエネルギーへのアップグレードと250GeV加速器設計最適化の可能性をもつものだ。規模は小さくなっているものの、素晴らしい科学成果、とりわけヒッグス研究の成果が期待できる加速器から開始することは、我々にとっては理想的な折衷案のように思える。コストが縮小されたことにより、関係国は計画にコミットしやすくなる。また、私はコミュニティは小さな加速器を建設することは、何も建設されなくなるよりもずっと有益だと合意したと考えている。このように検討される足掻くプロジェクトはILCが初めてのものではないだろう。

 

11月6日から9日までカナダ・オタワで開催された国際将来加速器委員会(ICFA)セミナーと同時に開催された、リニアコライダー国際推進委員会(LCB)とICFAのミーティングで、2つの文書が提出された。一つは250GeV加速器の科学的妥当性に関するもので、素晴らしい科学成果が確認され、さらに拡張された。もう一つは技術設計報告書(TDR)の付帯文書となるもので、250GeV加速器の最適化について記述した加速器設計に関する文書である。設計にはいくつかのオプションが示されており、最小限の影響でより高いエネルギーへのアップグレードを可能にしている。ICFAのILC-250に関する声明は以下の通りである。

 

声明文全文(2017年11月8日)

ILCの「ヒッグス・ファクトリー」としての250ギガ電子ボルト運転に関する国際将来加速器委員会(ICFA)の声明

欧州合同原子核研究機関(CERN)の大型ハドロンコライダー(LHC)で2012年にヒッグス粒子が発見されたことは、近年の科学における最も重要なブレークスルーの1つであり、基礎物理学の大きな一歩と成りました。ヒッグス粒子を精密に研究することにより、物質とその相互作用の最も基本的な法則の理解がさらに深まるでしょう。

250ギガ電子ボルト(GeV)の重心系エネルギーで運用する国際リニアコライダー(ILC)は、ヒッグス粒子の精密測定により素晴らしい科学成果をもたらすでしょう。したがって、国際将来加速器委員会(ICFA)は、ILCを、LHCとそのアップグレード計画とは相補的な役割を果たす重要な科学プロジェクトと認識しています。

ICFAは、ILCのコスト削減に関するリニアコライダーコラボレーションの取り組みを歓迎しています。 これは、250 GeV加速器が、2013に発行した技術設計報告書(500 GeVの加速器)に比べて最大40%のコスト削減が可能であることを示しています。

ICFAは特に、リニアコライダーの高エネルギーへの拡張性を重視しており、250GeVを超えるエネルギー領域で行うことが可能となる追加の測定で、大きな発見の可能性があることに注目しています。

ICFAは、今回の委員会で示された、リニアコライダー計画推進委員会(LCB)の報告書の結論を支持しており、日本が、日本のイニシアチブによる国際プロジェクト1として、重心系エネルギー250GeVの「ヒッグス・ファクトリー」のILCを、時宜を得て実現することを強く奨励します。

脚注[1] LCB報告書では、国際的なプロジェクトの最近の例として、欧州のXFELとFAIRが挙げられている。

オタワ、2017年11月

 

幸運と、良い結果が出ることを願っている。
さて、LCニュースラインはどうしていたか気になっていた皆さんへ:最近までLCニュースラインはフェルミ国立加速器研究所のマウラ・バローネ氏によって運用されていた。マウラは別のプロジェクトへと異動した。長年にわたるこれまでの努力に感謝の意を表したい。そして、ニュースラインは引越しをすることになったのである。同時に、ILCとCLICの活動を同じプラットフォームで管理するべきとの決定がなされ、CLICとILCのウェブは両方ともCERNで管理することになった。この作業は時間を要するものだったが、引越しが完了し、ようやく再開することができた。今後ウェブサイトにも変更が加えられる予定である。

原文