アジア加速器・測定器フォーラム AFAD 2018 出張報告 浦川 順治(KEK多国籍参画ラボ・コーディネーター(URA))

コラム
写真7: AFAD2018の記念写真

1月29日(月)、30日(火)の二日間、韓国Daejeon(大田)のDCC (Daejeon Convention Center)において、アジア加速器・測定器フォーラム(AFAD 2018)が開催されました。今年のフォーラムには、日本や中国をはじめとする9ヶ国と地域から、研究者や企業関係者172 名(企業展示など関連イベントの参加者を含む)が参加しました。AFAD(Asian Forum for Accelerators and Detectors)は、加速器及び加速器関連技術、検出器の研究開発、またそれらの応用分野におけるアジア・オセアニア地域内での連携と協力のさらなる発展を目指し、2011年度に発足したフォーラムです。アジア・オセアニア参加国の加速器共同利用機関の持ち回りで開催しています。

 

 

2日間にわたる会議は、初日午前のプレナリーセッションで開会挨拶後、KEKの岡田理事が「Status and prospect of KEK」のプレナリー報告(写真1)を行い、続いて、中国科学院高能物理研究所(IHEP)、韓国浦項加速器研究所(PAL)-XFEL、希少同位体科学プロジェクト(RISP)/韓国基礎科学研究院(IBS)、韓国原子力研究院(KAERI)のプレナリー報告が行われました。写真2にプレナリー報告会議場の様子を示します。午後から本フォーラムを構成する7つのワーキンググループ(光科学の為の加速器関連技術(WG1)、検出器技術開発(WG2)、産業・医療応用の為の加速器技術(WG3)、革新的加速器技術(WG4)、ハドロン・中性子科学の為の加速器関連技術(WG5)、ネットワーク・計算機(WG6)、低温技術(WG7))に分かれたパラレルセッションが開かれて、計96の研究発表が行われました。そして最終日午後には、各分野のまとめがプレナリーセッションで報告され、その後ソウル国立大学のSeon-Hee Seo女史による「Korean Neutrino Observatory」とACFA及びICFA議長のGeoff Taylor氏による「Computing for High Energy Particle Physics」のプレナリー報告(写真3)があり、主催機関のRISP/IBSの所長による閉会の挨拶で終わりました。(プログラムや発表資料はhttps://indico.ibs.re.kr/event/191/programからダウンロードできる。)

写真1:KEK岡田理事のプレナリー報告

写真2:プレナリー会場

写真3:ACFA及びICFA議長のGeoff Taylor氏

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会議ではアジア・オセアニア域内での小型加速器利用による社会への加速器技術、粒子検出器及び計算機技術の応用が真剣に検討され、生命科学、物質構造科学、そして医療応用なども視野に入っていたほか、各国で加速器、加速器技術、放射線の活用を進める機運が高まり、産業利用に向けたシステムづくりが急ピッチで進行しているという報告もありました。これらの加速器先端技術の開発及び応用の報告を聞くたびに、KEKの最先端加速器施設を活用した先端技術開発を行うKEK多国籍ラボプロジェクトの推進の重要性が改めて強く認識することになりました。KEKでは、研究大学強化促進事業の一環として、多国籍参画ラボの将来像を検討しており、KEK 国際連携推進室はその将来像をイメージする重要な機会としてAFAD を捉えて、開催支援など積極的に取り組んでいます。各国で加速器、検出器技術の活用を進める機運が高まり、産業利用を含めて検討や利用が進められている姿は、アジア・オセアニア地域の活発な研究開発と、情報提供に留まらない国際協力のあり方を示す好例となるでしょう。

 

写真4:バンケットでWon Namkung氏がACFAを作った経緯とAFADの歴史を説明した。

写真5:企業展示の様子

写真6: RISPのラボ見学の様子

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真4はバンケットの一場面です。浦項の放射光(PAL)を20年以上前に建設した時の所長であったWon Namkung氏がアジア地域将来加速器委員会(ACFA)を作った経緯とAFADの歴史を説明しています。写真5は企業展示の様子です。参加者は韓国企業の製品や新しい装置の可能性について真剣に話し合っています。写真6はRISPで行われているRAON(Rare isotope Accelerator complex for ON-line experiments)の装置製作と性能試験見学の様子です。短寿命核ビーム実験施設(RAON)建設は遅れながらも順調に建設が進んでいるようでした。

 

各国の持ち回りで開催することで、それぞれの国・地域の状況が毎回フォーカスされるところがAFADのユニークな特徴になっており、今後は、各カテゴリーの常任委員会(Standing Convener Committee)が一年を通して交流を行い、加速器応用の為の多国籍ラボプロジェクトが提案されることを期待致します。次回のAFADはインド・ニューデリーのインド大学連携加速器センター(IUAC)が主催することに決まり、ワークショップは成功裏に終了しました。