素粒子物理学将来欧州戦略に関する研究グループによる待望の報告書が、6月19日に開催されたCERN理事会特別会合で、研究グループ議長のハリーナ・アブラモヴィッチ教授によって発表された。この報告書は、精密な低エネルギー実験から超高エネルギーフロンティアまで、素粒子物理学の広い範囲をカバーしている。
CERNの当面の最優先課題は、大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の全面的な利用であることが確認された。
- LHC加速器と検出器の高輝度アップグレードの成功は、実験技術の継続的な革新とともに、欧州素粒子物理学の焦点であり続けるべきである。フレーバー物理学やクォーク・グルーオン・プラズマの研究を含め、LHCの物理学的可能性をフルに活用すべきである
- 電子・陽電子ヒッグス・ファクトリーは、最優先の次期衝突型加速器である。より長期的には、欧州の素粒子物理学コミュニティは、陽子・陽子衝突型加速器を達成可能な最高エネルギーで運転するという野心を持っている。この切実な目標を達成するには、イノベーションと最先端技術が必要である
- 日本における電子・陽電子国際リニアコライダー(ILC)のタイムリーな実現は、この戦略に合致するものであり、その場合、欧州の素粒子物理学コミュニティは協力を望むであろう
国際協力に関しては、次のように勧告している。
- 野心的な次世代衝突型加速器計画には、世界的な協力と建設・運転への長期的なコミットメントが必要である。CERNは、このようなプロジェクトをCERNでホストするためのフィージビリティ・スタディの一環として、潜在的な主要パートナーとの協議を開始すべきである。CERNが参加する欧州外のグローバル施設の場合、CERNは欧州地域のハブとして戦略的調整と技術支援を行うべきである。個々の加盟国は、CERNを通じた追加拠出、あるいはホスト機関との二国間および多国間の取り決めを通じて直接、新しいグローバル施設に資源を提供することができる
全体として、素粒子物理学にとって不可欠な次のステップとして、ヒッグスファクトリーの必要性と、ILCでの協力に対する欧州素粒子物理学コミュニティの意欲を、明確かつ強力に支持するものであった。