(ILCニュースライン9月25日号)
ILC計画の準備に向けた新たなフェーズに関する将来加速器委員会(ICFA)からの告知を受けて、アメリカ州リニアコライダー委員会(ALCC 議長ヒュー・モンゴメリー)は次回ワークショップ(バーチャル)を10月19日から22日に開催することを発表しました。米州コミュニティのILC計画への参画を構築し、Snowmass 2021への貢献の動機付けを促すとしました。
ワークショップの議題は、先日ICFAにより設置されたILC国際推進チーム(ILC-IDT)主動のILC準備研究所実現に向けた取り組みを特に強調。ILC-IDTは、2013年から計画実現に向けて活動してきたリニアコライダー・コラボレーション(LCC)によるグローバルな取り組みのリーダーシップを引き継ぎます。
Snowmass 2021を皮切りに、米国で高エネルギー物理学将来計画に関する重要なプロセスが現在進行中。Snowmass 2021の後には、米国エネルギー省と全米科学財団(NSF)が合同で諮問する素粒子物理学プロジェクト優先順位決定委員会(P5)の戦略的計画プロセスへと続き、高エネルギー物理学における米国連邦政府の支援・資金調達の機会に優先順位が付けられます。この期間中に全米研究評議会では約10年毎に行われる高エネルギー物理学の調査を実施します。2014年のP5レポートは、ここ数年間の、高エネルギー物理学への大幅増資を米国議会に動機付ける重要な要素でした。新たなP5プロセスが米国高エネルギー物理学への資金調達の継続的な進展につながること、また、ILCに向けた取り組みがP5計画において強力な役割を担うことが重要です。
AWLC2020のプログラムについては現在進行中です。プログラム委員会の共同議長はアンディ・ホワイト(テキサス大学アーリントン校)と筆者が務めます。4日間にかけて、パラレルセッションを午前中(PDT:太平洋夏時間)に、全体会議を午後に行います。初日19日月曜日の全体会議では、ILCに関する物理の概要、進展状況およびILC-IDT設立の手順について発表があります。月曜日はその他に、欧州戦略アップデートの報告を含め、各地域からの現況報告も予定しています。20日火曜日は加速器のグローバルR&Dに集中したプログラムです。21日水曜日は追跡と熱量測定、およびソフトウェアとコンピューティングに関する特定の検出器について様々な講演とともに、ILC検出器に必要な物理に関するプログラムになっており、若手物理学者のためのILCについての議論で締めくくります。
最終日の22日木曜日はILCが新物理の展望にもたらす物理インパクトに関する講演が行われ、検出器の今後の計画と建設の想定タイムラインについて説明します。米国政府の展望に関する最新情報について政府関係者による講演も予定しています。ワークショップを締めくくる前に、現在活躍中のILCコラボレーターとコミュニティに属さない中堅研究者によるパネルディスカッションを行います。
世界規模のILCコミュニティでは、ここ数年、年間2つのワークショップを行っています。一つは、CLICの研究者も交えたリニアコライダー国際ワーククショップ(LCWS)、もう一つは地域型と言いつつも世界中から参加者が集まるワークショップです。前回のLCWS2019は日本の仙台にて行われました。コロナウイルスの蔓延により、毎年春に開催する地域型ワークショップ(今回はアメリカ州)は2020年10月に延期となりました。その間にICFAは2月SLAC研究所、8月の高エネルギー物理学国際会議(ICHEP)中の2回会合を設け、ILC-IDTを設立しました。
今回のワークショップはSLAC研究所がホストし、マイケル・ペスキンが現地組織委員会(LOC)の議長を務めます。
ワークショップウェブサイトはこちら
我々は今回のワークショップにて、素晴らしいスピーカーとともに、準備研究所の計画や、物理、測定器、加速器のトピックをカバーした、情報豊富な興味深い内容のプログラムを用意しています。コライダー物理の将来性に興味がある方は、ぜひ、今回のワークショップに登録し、オンラインによるプレゼンテーションに参加してください。
著者:JIM BRAU
オレゴン大学教授、ILC推進チームワーキンググループ3メンバー。リニアコライダー・コラボレーションでは、物理・測定器担当ディレクターを務めた。