※この記事は2021年1月31日に発行されたILC NewsLineの翻訳記事です。
この15年の間にILC実現に向けた日本のサポートは広がってきました。学術、産業界、芸術家や一般の科学ファンなど、さまざまな層の人々が一つになって日本でのILC建設を支持すると声を挙げています。ILC国際推進チーム(IDT)の米州代表であるアンディ・ランクフォード氏は、最近、ILCを推進に関する一連の取り組みを報告した、新しい委員会の結成が支援の最新の波であると述べています。
日本の高エネルギー物理学研究者会議を代表する高エネルギー委員会は、時宜を得た実現に向けてILC計画を発展させ、日本の高エネルギー物理学コミュニティを主導するため、「ILC推進パネル」を2020年秋に設立しました。今月、推進パネルは「ILC誘致実現を目指す日本国内の産学地域連携による取組みについて」というかなり長いタイトルの、非常に興味深い報告書を作成しました。この新しい報告書では政界、産業界、政府および学術セクターによるILC推進の素晴らしい取り組みがまとめられています。
報告書では、15年近く前に発足した、党派を超えて国会議員100名以上が参加する「リニアコライダー国際研究所建設推進議員連盟」と2018年に日本の与党で結成された「ILC誘致実現連絡協議会」を振り返り、河村建夫議員が代表を務める、これら二つの影響力を持つ政治団体は、科学、技術、イノベーションから人口減少の克服、地域活性化まで、日本の国家的優先事項を横断するプロジェクトであるとしてILCを称賛しています。議連のメンバーは米国や欧州を何度も訪問し、政府高官や立法府のメンバーとILCについて話し合うなど、国際レベルでも活動しています。
日本では、多くの団体がILC実現を国家優先事項と位置づけています。主な組織がILCサポートのため結成されています。例をあげますと、先端加速器科学技術推進協議会(AAA)は企業100社と40学術機関が参加し、何年もILCを推進しています。最近では、日本3大経済団体が、ILC実現と、「アジア発の国際的な大型科学技術施設」としての効果を支持する共同声明を発表しました。また、著名なビジネスや文化人が組織するILC100人委員会や、著名なアーティストや30万人以上のILCサポーターを含むILCサポーターズなどの組織が立ち上がっています。
当然のことながら、ILC建設候補地の地元では、ILCを強く支持しており、その支持と活動のレベルは非常に高いものです。産学官及び地元自治体のメンバーで構成される東北ILC事業推進センターでは、地域の様々な取り組みをコーディネートしています。昨年、ILC国際推進チームの設立に合わせて、環境アセスメントからインフラ整備など地域課題に対応するため、元KEK機構長の鈴木厚人氏を中心とした東北ILC事業推進センターが設立され、活発な活動が行われています。ILCの実現を求める決議は、地域の多くの地方自治体で可決され、地域の代表者は、日本政府に対してハイレベルで積極的に働きかけてきました。
ILC の発見の可能性を手にしたい科学者のコミュニティにとって、日本での ILC の強力なサポートと、ここ2~3 年の間の熱狂的な成長を知ることができたことは喜ばしいことです。今回の欧州素粒子物理学戦略のアップデートによるILCへの支援と米国政府の熱烈な後押しがあれば、日本とパートナー国がILCの実現に向けて歩みを進めることを決定すると、私たちはこれまで以上に楽観的に考えることができるのではないでしょうか。一方で、「ILC推進パネル」の進展にも期待しています。
「ILC推進パネル」は山下了東京大学特任教授が議長を務めています。その任務とメンバーはこちらから参照ください。報告書「ILC誘致実現を目指す日本国内の産学地域連携による取組みについて」は一見の価値ありです!
著者について:カルフォルニア大学アーバイン校名誉教授。現在はLHCのATLAS実験の研究に従事。実験開始から実験開始からヒッグス粒子の発見までATLAS副代表を務めた。2012年から2018年まで米国高エネルギー物理学諮問委員会の議長を務め、米国素粒子物理学の戦略計画を策定した。当時、各主要なパートナーが自国で独自の世界クラスの施設をホストし、他の場所で優先度の高い施設をホストしている場合には、強力な国際的パートナーシップとこの分野の大きな可能性を提唱した。また、国際協力について米国エネルギー省(DOE)へ助言や支援を行ってきた。日本でのILCに対する米国政府の強い支持はバイデン大統領の政権下でも継続されると予想している。