国際リニアコライダー(ILC)計画は、国際協力で進められている次世代加速器計画です。ILCの実現に向けて活動している人にスポットをあてるインタビューシリーズ「ILCをつくる人」。
第4回は、岩手大学技術職員の庄司愛子さんです。
ご自身の経歴をお願いします。
東北学院大学の工学部を出て、修士課程から岩手大学の大学院に進学し、そのまま博士課程に進み、現在に至ります。
大学を選ぶ時から、工学部に行きたいというのは固まっていたのですか?
物理が好きだったのですが、中でも電気が好きでした。電気系の学科に進んで勉強がしたいなというのがあり、選択しました。高校の時に小柴昌俊先生が講演に来てくださり、その講演会で素粒子について知りました。そこから素粒子に興味を持ち、その中でも一番身近な電子が気になり、電気を勉強したいなと思ったんです。
ILCに関係するようになったのは博士課程からですか?
修士の頃からです。岩手大学に進学したのですが、岩手がILCの建設候補地として期待されていたので自然の流れで。たしか私が学部3年生のときにILCの候補地が岩手に一本化されて、4年生のときには、目的はILCというわけではなかったのですが、今の研究につながるような基礎研究はしていました。
岩手ではどのような研究をしていましたか?
ILCで使用する飛跡検出器の開発です。具体的には、荷電粒子の飛跡を測定するのですが、実験で使用できるかどうかを評価したり、解析ソフトウェアの開発などもしていました。検出器の中をどのように粒子が通って行ったか、飛跡が複数本になった場合に、きちんと分離できているかなどを見ながら開発してきました。信号増幅装置もやっていて、電圧をかけたときに、どのくらいの電圧でどのくらい信号が増幅するのかなどを調べていました。
どういうところがおもしろかったですか?
実験装置をつくるところから始めたのですが、どうやったら動くかなと、最初から計画していって、分からないことだらけの中で、いろんな先生や職員に聞いていって、出来上がっていく過程が楽しいと思いました。
これから「技術職員」としてどのようなことを?
研究で使用する装置で「こうしたらうまくいくのでは」というアドバイスなどを行っていく予定です。
ILCができたら、どのように関わっていきたいですか?
実験で使われる検出器がきちんと使用できるかという面から、サポートしていきたいと思っています。
ILCにはどんな価値があると思いますか?
新たな物理法則をみつけるすごい価値があると思います。困難な取り組みですが、世界中の多くの人たちがその課題に向かって取り組むのはすばらしいことで、わくわくします。
一般の人にどうしたらその価値が伝わるでしょう?
私の場合は、高校生の時に小柴先生の話を聞いたことで物理に興味を持ったので、そのようなきっかけも大事ですね。高校の物理の先生がダメもとでオファーしたら来てくれたみたいです。その先生は、物理学会の講演会などにも参加して、最先端の物理を生徒に教えようとしてくれていました。
ILCへの思いを語ってください。
本当に、できてほしいなど思います。新たな発見が生まれる場所として身近にあって、そこから新たな知見が見出される場所。これからの素粒子物理学、それ以外の学問の発展があると思います。