LCWS2021~コミュニティはILC準備研究所を次の焦点に~

ILC ニュースライン

※この記事は2021年4月19日に発行されたILC NewsLineの翻訳記事です。

3月15日~18日の期間、欧州コミュニティ主導の「国際リニアコライダー・ワークショップ2021」(LCWS2021)がオンラインで開催され、900名以上の参加登録がありました。今年前半の会合として、コンパクトリニアコライダー(CLIC)と国際リニアコライダー(ILC)に関する、主に物理、測定器、加速器研究について議論されました。

本シリーズの前回のワークショップ(LCWS2019)以降、多くの新しい国際的な動きがありました。欧州素粒子物理戦略(ESPP)アップデート2020は、電子・陽電子ヒッグスファクトリーを次世代の最優先コライダーであると位置づけています。線形コライダー(CLICもしくはILC)は初期段階においてはヒッグスファクトリーとして運用しますが、将来的にはエネルギーアップグレードを見据えています。CLICプログラムとそれに関連する2021-26年の高勾配研究開発は、ESPPの結果に基づいて定義されています。

国際将来加速器委員会(ICFA)は、KEKをホスト機関とするILC国際推進チーム(IDT)の設立を発表し、日本でのILCホストに向けた準備が本格化しました。ILCは現在、政府、立法府、産業界、学術界、そして建設地となりうる東北地方と密接に連携しながら、日本における全般的かつ広範な取り組みの焦点となっています。この進捗状況は、日本高エネルギー物理学研究者会議(JAHEP)の下に設置されたILC推進パネルが最近発表した文書にまとめられています。日本での進展に加えて、2020年にはILC準備研究所プログラム(ILCプロジェクトを建設準備状態にするための4年間の準備段階)および準備研究所を開始するために必要な組織体制とプロセスの策定に向け、IDTが設置され、集中的な取組みが行われました。米国では、検討されているタイムスケールではILCが最も有力なヒッグスファクトリーの候補とし、Snowmassプロセスが進行中です。

LCWS2021は、月曜日の朝、約160名の学生が参加した第8回リニアコライダー物理スクール(オンライン)でスタートしました。月曜日の午後から木曜日の午後まで、全体会議と並行して行われたセッションでは、リニアコライダーの加速器設計、測定器開発、物理学研究の進捗状況を確認し、同様に次のステップに向けての展望を示しました。ILCとCLICで共通の活動トピックについては可能な限り同時に議論されました。

メインの全体会議は月曜日と木曜日に行われました。月曜日の全体会議では、ILCとCLICに関する技術的・科学的側面の報告、日本(KEK、JAHEP ILC推進パネル、東北)と北米からの状況報告、IDTの最近の進捗状況などが行われました。木曜日の全体会議では、CERNと欧州の展望についての講演、リニアコライダー関連のSnowmassの準備と文書化に関する最新情報、並行して行われた数々のワーキンググループのセッションの要約などが行われました。 火曜と水曜の全体会議では、それぞれ加速器と物理・測定器の研究に焦点が当てられました。

51の分科会で構成されたこのワークショップでは、現在進行中の研究を発表するだけでなく、情報を得たり、参加したりするための十分な機会が提供されました。物理・測定器の分科会だけでも、144件の演題が寄せられました。4日間で合計292件の講演が行われました。

これらのセッションに加えて、プログラムには特別に「新しい研究と機会のトラック」が設けられ、ILCのヒッグスファクトリー以外の相補的なプログラムのアイデアについて議論されました(例:ダークセクター物理学に関連する固定標的実験やビームダンプ実験、加速器や測定器研究開発のための低エネルギービーム、照射の可能性、電子-レーザー衝突など)。また、「New Technologies & Ideas for Collider Detectors」というセッションも設けられました。これらのセッションは、ILCで行う実験計画のExpression of Interest(関心表明)に向けた第一歩であり、これらのテーマは、10月26日から29日につくば市で開催予定のILCに特化したワークショップでさらに突き詰めていきます。

新しい特徴は、ICFA-ANAパネルが準備した先進的で新しい加速器(ANA)技術に関するセッションです。これらの技術は、長期的にはLCトンネルに導入して数TeVのエネルギーに到達させることができるだけでなく、短期的にはLC施設がそのような新技術を開発するための興味深いユニークなビームや機会を提供することもできます。

ILCの産業的側面を取り上げたセッションには約70名の参加者が集まり、ILC準備研究所の活動やILCの主要技術に関する国立研究所や関連する産業界のパートナーの専門知識やイノベーション力を紹介する機会が設けられ、とても興味深いものになりました。

今回のワークショップでは、将来のリニアコライダー実現に向けて、国際的なコミュニティや取り組みが活発化していることが強調され、2035年までにヒッグスファクトリーを稼働させるための次のステップとして、ILC準備研究所に注目が集まっています。

スタイナー・スタプネス、組織委員会を代表して、また組織委員会に感謝の意を表して。

英語原文