ILCの物理学 ヒッグス粒子①

ILCの物理学

CERNのセレモニーでのヒッグス博士(右)同時にノーベル賞を受賞したアングレール博士と©︎CERN

 ILCの研究で最も重要なテーマのひとつが「ヒッグス粒子」。2012年に欧州合同原子核研究機関(CERN)のLHC加速器の実験で見つかった素粒子です。半世紀以上前に英国のピーター・ヒッグス博士らがその存在を予言した粒子で、その発見により標準理論が完成しました。科学的な重要性から、
発見の翌年2013年にヒッグス博士らはノーベル物理学賞を受賞しています。

 ビッグバン直後の熱い宇宙では、全ての素粒子は光速で運動していました。宇宙が膨張し、温度が1000兆度に下がったとき「相転移」という現象が起き、宇宙の状態が大きく変わりました。ヒッグス粒子は他の素粒子にまとわりつく性質を持つようになり、ヒッグス場を通る素粒子は運動しにくくなりました。これが「質量」のはじまりです。この仕組みのおかげで、宇宙では原子や分子が構成され、星や銀河が生成し、人類が存在しているのです。宇宙誕生の謎を解明するために、ヒッグス粒子の研究は大きな意味を持つのです。