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35年の軌跡に「おつかれさま」 2006.1.19 |
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〜 12GeV陽子シンクロトロンシンポジウム 〜 |
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現在KEKにはいくつもの高エネルギー加速器がありますが、その原点とも言うべき加速器、それがKEK 12GeV陽子シンクロトロン(KEK 12-GeV PS)です。この加速器は多くの共同利用実験に供され、様々な成果を上げてきましたが、2005年をもってその使命を終え、大規模な実験を停止することになりました。計画が練られてから35年ほど、また実際に実験に用いられて30年余りが経過し、その間にこの加速器に携わった人の数も膨大なものになりました。これを期に、この加速器の残した足跡を振り返り、将来の研究に生かすべく「KEK 12-GeV陽子シンクロトロン ----- その35年の軌跡 ---」と題するシンポジウムが1月13日と14日の2日にわたり開催されました。 予想を上回った参加人数 シンポジウムの幕開けはまず施設見学です。30年以上の歴史を残したこの加速器や、それに付随する実験設備は最初作られたままではなく、常に新しい実験を遂行するために改良、改造が施されてきました。そのため、いろいろな時期、場面でこの加速器に接した人々が現在のKEK 12GeV陽子シンクロトロンを目の当たりにし、ある人はノスタルジックな気分に酔い、またある人は今後のKEKの計画遂行に思いをはせました。 見学に続き、講演会が開かれました。主催者は前もってシンポジウム出席者の人数を調べ予想をしていましたが、それをはるかに上回る人数の人があつまり、講演会場は立ち見が出るほどの盛況になりました。講演者は、加速器を作り発展させる人、加速器からのビームを使って実験する人などさまざまな立場からの人々で、聞く側も今までとは違った視点でこの記念すべき加速器施設の歴史を知ることができたようです。また聴衆の中には、加速器建設や実験に携わった研究者のみではなく、こうした大型施設建設に協力をしてきた企業の人々の姿もみられました。 運転開始で苦労した主リング 主リングで陽子を初めて8GeVまで加速する時の苦労を、当時加速器の設計や運転に関わっていたKEKの木村嘉孝監事は次のように述べました。 「8GeV(主リング)のほうは非常に苦労しました。1975年11月末に初めてビームを入れたんですが、夜の11時ごろに1ターン回って、それから30分で10ターン回りました。が、これから先が非常に長かった。高周波加速のフィードバックのシステムなどを改良するのに非常に時間がかかりまして、ある程度まで加速できたのが翌年の2月、ここでもまだトランジション(遷移)までしかいけなくて、毎日毎日夜中までやってました。」 「いつ(トランジションを)越せたかというと、3月4日の夜中。RF(高周波)のコントロールをいじくってたら、なんかのはずみにひょっと越せたんですね。それでログブック(実験記録簿)に『第一発見者』と名前を書いてあります。非常に感激しましたね。午前1時にお祝いのワインを飲んで、でもそれでやめなかったんです。また延々とやって、フィードバックやなんやらをいじくり回して、なんとか朝4時半頃に毎パルス延びるようになってめでたしめでたしということで、これは非常に苦労した加速器ですね。」 「世界に追いつけ」から「世界で最初」へ ここで、このシンポジウムでの講演に基づき、この加速器の歴史について簡単に紹介してみたいと思います。 (1)第1期 1970年代中頃から1980年代中盤 アメリカやヨーロッパで発達している高エネルギー加速器の建設に追いつくために、筑波に大規模な加速器の建設を目指し、またそれをとにかく建設した時期。完成した加速器のエネルギーは必ずしも世界一流ではなかったが、それでも多くの実験が遂行され、沢山の後継者が育った。 (2)第2期 1980年台中盤から1990年代前半 KEKには衝突型加速器トリスタンが完成し、KEK 12GeV陽子シンクロトロンだけが高エネルギー物理学実験用の加速器ではなくなった。この期には、素粒子実験は地味ではあるが、ある程度世界のトレンドに乗れる実験が行われ、一方では原子核物理学の実験が行われた。 (3)第3期 1990年代後半から2005年 今までの様相とは全く異なり、12GeV陽子シンクロトロンで作られたニュートリノビームを250km離れたスーパーカミオカンデまで飛ばし、ニュートリノに質量があることを確かめる実験をおこなった。(「ニュートリノに質量」の記事参照)この実験はニュートリノの質量と言う現代の素粒子物理学のもっとも注目されるトピックスのひとつに迫るもので、KEKB B-Factory によるCPの破れ発見(「深まるCP対称性の破れ」の記事参照)とならんで、日本の研究所KEKの存在を世界中の素粒子物理学者にアピールするものとなった。 J-PARCへの期待 さて、シンポジウムの初日の夕方にはパーティが開かれ、30年以上の歴史を担う各世代の人が集まり、ちょうどクラス会のような雰囲気で終始しました。 KEK 12GeV陽子シンクロトロンを使った素粒子・原子核の共同利用研究は終わりました。しかし、この経験はJ-PARCに引き継がれてゆきます。その期待をこめてパーティはお開きとなりました。
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