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トリスタン計画報告書TOP
 高エネルギー物理学研究所長挨拶
 高エネルギー委員会委員長挨拶
 1. は じ め に
 2. トリスタン計画の概要
 トリスタン加速器
実験グループと測定器
研究体制・組織
トリスタン実験プログラム
 3. 研 究 成 果
 4. トリスタンと加速器科学
 5. 周辺分野との関わり
 6. ま と め
 List of Figures
 List of Tables
 グラビア写真集
 
2. トリスタン計画までの状況

2.3 研究体制・組織


トリスタン物理審査委員会(TPAC)は、物理プログラムについて所長に助言・勧告することを目的に、国内外の物理と加速器の専門家から構成され、表6に示されるように毎年1回開かれてきた。実験提案の審査はここで行われ、採択された実験の進行状況のレビューと指導、及び所の実験支援体制についての勧告もなされてきた。トリスタン実験を推進するには、装置の設計・建設に始まり、長期にわたるデータ収集と物理解析で、大学チームを中心とした多くの研究者の共同作業を必要とした。そのため実験提案の採択にあたっては、研究内容の評価と共に、共同実験グループの実験遂行能力の是非が重要な基準になった。

図10図11図12に実験がピークを迎えた1989年頃のAMY、TOPAZ、VENUS 各グループのメンバー構成を、高エネ研、高エネ研以外の国内機関(大学と研究所)、国外機関別に大学院学生も含めて示した。研究活動に関するグループ運営は各グループ独自の判断に任せられているが、どのグループでもすべての構成メンバーは同等であることをを基本方針としてきた。

トリスタン計画を推進するにあたって取られてきた研究体制を図13に示す。加速器の運転、維持、改善のすべては、建設を担当した加速器研究部が行ってきたが、このような大規模の実験プロジェクトでは加速器運転の他に、研究所の技術支援が必要不可欠となる。高エネ研には以前から全所的研究支援組織として、放射線安全管理センター、データ処理センター、低温センター、工作センターが存在したが、トリスタンを契機により充実された。 また物理研究部内の支援グループも大幅に増強され、超伝導磁石の開発・運転・保守のための低温グループ、電子回路の開発設計・保守を行う回路室、データ収集・記録のための計算機関係を担当するオンライン計算機グループ、実験装置や実験室の安全を確保するための安全グループがトリスタン計画に大きく貢献した。協力体制の強化は高エネ研の理論物理グループにも及んだ。トリスタンのような高エネルギー素粒子反応では実験結果から普遍的結論を引き出すには、輻射補正や高次効果などの高度の理論計算が必要である。このため理論グループ内にコアを持つ国内プロジェクトチームが結成され、物理解析のための理論面からの研究が系統的に行われた。

トリスタン物理審査委員会の勧告に沿った実際面での計画推進では、所内に設置されたトリスタン推進連絡会が母体となった。毎月1回の頻度で実験グループ、加速器チーム、所内の支援グループの関係者が所の首脳部と一同に会し、業務連絡と調整、さらに実験スケジュールや施設の改善などの決定がなされた。もっと細かいマシンタイムの調整や、加速器運転条件についての実験グループと加速器運転担当者との打合せは、毎週1回の頻度で行われた。運転スケジュールについては、リニアックが放射光施設の入射器 でもあり、コライダー実験とスタイルの異なるプログラムとの両立に難しさがあった。しかしこの問題も、連絡会などでの調整や、リニアック運転の信頼性の実証などを経て、徐々に緩和されていった。

これら所内施設の担当者との日常的な対応には、実験グループの高エネ研メンバーがあたった。また、大学で制作される測定器要素のための諸手続きや完成後の組み込み、データ解析環境の整備、さらに実験装置や低温機器のための安全シフトなども、研究所メンバーが担当した。このように、各実験グループ内での所内外メンバーの密接な協力体制は、計画推進にとって非常に重要であった。

高エネルギー物理学研究所は、世界に開かれた共同利用研究所である。トリスタンは最前線の研究を可能にする施設なので、アメリカおよび近隣アジア諸国から多くの研究者が集まった。特に、AMYはアメリカ主導で形成された日本、韓国、中国、フィリピン、アメリカの合同チームである。図14にAMY実験のために高エネ研に常駐したアメリカ側研究者の延べ人数を、学生と教官別に1984年から1995年まで年ごとに示した。データ収集が始まった1986年1年間に滞在したアメリカ側研究者の延べ人数は、学生と教官を合わせて35人に上った。現在までにAMYで学位を取得した者は、アメリカの大学が22名、韓国が6名、日本は6名である。これらからも明らかなようにAMY実験は、日本をベースにした初めての大掛かりな国際協力プロジェクトとなった。

トリスタン関係経費は、施設費、設備費、運転経費、実験経費より成り、図15で見られるように、1981-1986年度までの建設期間、それに引き続く1995年までの実験期間を通じて支出された。また、図16のように、トリスタン関係定員も1987年の本格実験開始に向けて増員された。


 
1.1982. 5.10尾崎、折戸、北垣、菅原、高橋、藤井、山口
予備申請課題の審議(VENUS, TOPAZ, Water Ball)
2.1982. 5.27尾崎、折戸、北垣、菅原、高橋、藤井、山口
VENUS, TOPAZ第1次採択
3.1983. 3.17-19R. Schwitters, P. Soeding, 尾崎、折戸、北垣、菅原、高橋、藤井、山口
VENUS, TOPAZ 本採択、AMY, HRS 第1次採択
4.1983.11.8-10R. Schwitters, P. Soeding, 尾崎、折戸、北垣、菅原、高橋、藤井、山口
AMY 本採択
5.1984.11.20-22R. Schwitters, P. Soeding, 尾崎、折戸、北垣、菅原、高橋、藤井、山口
SHIP 本採択、bクォーク物理への基本姿勢
6.1985.11.12-13R. Schwitters, P. Soeding, 尾崎、折戸、北垣、菅原、高橋、藤井、山口
立ち上げ実験と試験運転のプラン
7.1987.2.25-26R. Schwitters, P. Soeding, 尾崎、折戸、北垣、菅原、高橋、藤井、山口
実験エネルギーへの方針
8.1988.3.24-25R. Schwitters, P. Soeding, 尾崎、折戸、北垣、菅原、高橋、藤井、山口
ミニベータ、測定器増強への方針
9.1989.3.27-28R. Taylor, G. Wolf, 岩田、尾崎、折戸、小林、菅原、藤井、山田
実験エネルギーへの方針、bクォーク物理計画への具体的指針
10.1990.3.26-27R. Taylor, G. Wolf, 岩田、尾崎、折戸、小林、木村、藤井、山田
第2期実験の奨励、(Bファクトリー設計報告書作成の勧告)、
(PEGASYS 実験提案への判断)
11.1991.3.22-23R. Taylor, G. Wolf, 岩田、尾崎、折戸、小林、木村、高橋、山田
1日に1/pb, 1年に100/pbの目標設定、
(Bファクトリー計画の早期実現勧告)
12.1992.4.22-23R. Taylor, G. Wolf, 岩田、尾崎、折戸、小林、木村、高橋、山田
1日に1/pb, を達成した第2期実験を強く支援、
物理ワークショップ開催を勧告
13.1993.3.25-26P. Oddone, G. Wolf, 岩田、三田、折戸、小林、木村、高橋、山田
年に100/pbを達成した勢いでのデータ蓄積を勧告、
(Bファクトリー実験予備申請に向けた国際集会等の手続きの提案)
14.1994.3.22-24P. Oddone, G. Wolf, 岩田、三田、折戸、小林、木村、高橋、山田
解析上の系統的誤差の改善努力を評価、
(BELLEのLol承認、詳細技術設計に進むことを勧告)

レプトンコライダー諮問委員会(LCPAC)へ改組

15.1995.1.24-27K. Huebner, J. Lefrancois, P. Oddone, R. M. Sundelin, G. A. Voss, 岩田、三田、折戸
黒川、小林、木村、高崎、高田、長島、山田、山崎
物理業績を評価、蓄積データの完全解析への努力を希望、
(BELLEの詳細設計の承認を勧告)

  Table 6: トリスタン物理審査委員会(TPAC)の推移

  
Figure 10: AMYグループ構成(100人) Figure 11: TOPAZグループ構成(69人)
  
Figure 12: VENUSグループ構成(83人) Figure 13: トリスタン計画の研究体制と組織
 
Figure 14: AMYグループのアメリカ側研究者が常駐した延べ人数
  
Figure 15: トリスタン施設の整備及び運営状況の推移 Figure 16: トリスタン関係定員の整備状況


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