PF

2021PF-S003 : 軟X線領域のコヒーレンスを利用したイメージング手法の技術開発線

実験責任者:中尾 裕則 准教授(固体物理学研究部門)

共鳴X線散乱(RXS)は、元素の吸収端を利用することで、元素だけでなくその軌道選択的に電子状態の周期構造を調べることができるユニークな実験手法である。特に、超伝導・巨大磁気抵抗効果・巨大電気磁気効果など多彩な物性を発現し注目される3d 遷移金属酸化物・4f 希土類金属化合物の新奇な物性の起源を担う3d4f 電子状態を直接的に観測するためには、軟X線領域を利用する必要がある。実験責任者らは、PFにおいて共鳴軟X線散乱実験用の真空中X線回折計群を開発し、数多くの成果を上げてきた。さらに、軟X線領域のRXSで観測された信号強度は桁違いに強く、PFにおいてもコヒーレンスを利用した研究が可能であることを明らかにした。 この結果を受け、RXS手法と光のコヒーレンスを組み合わせた磁気イメージング研究を立ち上げ、磁気スキルミオン格子のコヒーレント回折イメージング(CDI)に世界に先駆けて成功した。

これまでに2015S2-005, 2018S2-006において、広視野・低分解能実空間イメージングから狭視野・高分解能 CDI まで連続的に変化させる測定手法の着想に至り、このアイディアを具現化したマルチスケール軟X線回折顕微鏡の開発・利用研究を進めた。 また当顕微鏡の逆空間信号に注目することで、 磁性体中のトポロジカル欠陥構造に対する新たな観測手法を見出した。 このように軟X線領域のコヒーレンスを利用したイメージング手法 は、まだまだ未開拓で、様々な可能性を秘めている測定手法と言える。本PF-S課題では、先端的な手法開発を推進し、PFらしい測定してみて初めて明らかになるような発見を目指す。また、観測対象にマッチした測定手法を明らかにし、その後の利用展開に向けた重要な指針を得ることも可能となる。

本イメージング手法の主な研究対象である磁気テクスチャは、その物性を理解する上で、外場に対する応答、すなわち様々な時間スケールでの時間応答を捉える手法の開発が必要である。これに関しては基盤技術部門の時間分解チームと組むことにより推進する。加えて、軟X線領域のコヒーレンスを利用したイメージング手法の成否のカギを握っているのがX線検出器であり、基盤技術部門の検出系チームと組むことにより、検出器の革新による発見も目指す。

氏名 所属
中尾 裕則 放射光科学第一研究系・固体物理学研究部門
山崎 裕一 物質構造科学研究所・客員准教授(NIMS)
足立 純一 放射光実験施設・基盤技術部門(時間分解チーム)
深谷 亮 放射光科学第二研究系・材料科学研究部門
五十嵐 教之 放射光実験施設・基盤技術部門
田中 宏和 放射光実験施設・基盤技術部門(光学系チーム)
西村 龍太郎 放射光実験施設・基盤技術部門(検出系チーム)
実施年度 2021, 2022
使用ビームライン BL-13A, BL-16A, BL-19A/B, BL-11B, BL-3A, BL-4C, BL-8A, BL-8B


Last updated: 2022-4-14