PF

PF産業利用成果トピックス #1

大気中での鋼の腐食挙動を大幅に改善する"さび"の放射光解析

PFでの研究期間
2004年-2013年
研究機関
新日鐵住金株式会社
主要な研究者
木村 正雄、紀平 寛、村尾 礼子
使用ビームライン/手法
BL-6C,9A,9C,11B,12C / X線回折,XAFS

研究の概要

無塗装で、大気環境下で長期間使用可能な鋼材の耐食メカニズムを放射光のその場観察法(XAFS,XRD)を用いて解明。微量の元素添加により耐食性を向上させる"良いさび"が形成することを発見。

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PF活用のポイント

従来技術では、腐食前の鋼材の電気化学的測定、もしくは、長期腐食試験後の試料を断面観察する手法が中心。放射光を用いることにより、実環境を模擬した乾燥⇄湿潤サイクルの中での反応を、XAFS,XRDによりナノレベル観察でき、耐食性向上のメカニズムの解明と指針を得る事ができた。


産業への貢献・製品への応用・経済波及効果など

大気腐食を左右する"さび"の形成を制御することにより長期大気で使用可能な材料設計指針を提示。低環境負荷でインフラ維持を実現。開発された材料は、実際の橋梁へ適用。


論文・総説

  • 論文:日本金属学会誌66, 166(2002), Corr. Sci., 47, 2499(2005)
  • 総説:日本結晶学会誌 50, 194(2008)
  • 著書:Characterization of Corrosion Products on Steel Surfaces (Springer, 2006)

受賞

  • 日本金属学会・論文賞、同・功績賞、内閣府・ものづくり日本大賞(2009)
  • 日本鉱物科学会・応用鉱物科学賞(2013) 等

研究者からの一言

PF での実験は、単に放射光のビームタイムを使えるだけでなく、スタッフの方々に測定法や材料科学に関して多くのアドバイスを頂きながら研究を進められました。昼夜ぶっ続けの実験は大変でしたが、自分が望む「材料開発のための観察報」を実現して、従来法では解明できなかった現象を解明できたこと、それが材料開発に繋がったことは大きな喜びでした!