謎にせまる:原子・陽子・素粒子

コラム

ILC通信12.indd「水の分子は酸素原子1個と水素原子2個からできている」と学校で教わりますね。では、スプーン1杯の水には、水分子がいくつくらい含まれていると思いますか?

正解は1億の5京倍個(1京は1兆の1万倍)です。日本の全人口を1兆倍集めて、更に5万倍ほど集めた数の分子が、スプーン1杯の水の中でひしめき合っている訳です。

そんなに小さい分子ですが、その中にはさらに小さな原子核があって、原子核は陽子や中性子からできています。陽子や中性子の中にはもっと小さいクォークやグルーオンが閉じ込められていて、飛び回っています。

水の分子1個を日本列島の大きさまで拡大したとしましょう。このとき、酸素原子の中央にある原子核は、日本列島の中央にあるサッカー場1つくらいの大きさしかありません。サッカー場の外の日本列島の膨大な空間を、たった10個の電子が量子力学という不思議な性質にしたがって飛び回っています。サッカー場と隣のサッカー場がくっついて、つぶれてしまったりすることがないのは、この電子がとなりの原子核の周りの電子と電気的に結合するためです。

サッカー場の中には8個の陽子と8個の中性子が詰まっています。その中を飛び回っているクォークやグルーオンの大きさは、現在の物理学では測ることができないほど小さいのですが、ミツバチよりも小さいことが分かっています。クォークやグルーオン、さらに電子やその仲間のことを物質の素(もと)となる粒子、素粒子と呼びます。

日本列島の中のミツバチ。ILCなどの加速器を使って物理学者が調べようとしているのは、人間の想像の限界ともいえるような、ミクロの世界で起きる出来事なのです。

ミクロの世界を調べようとすればするほど、エネルギーの高い粒子が必要です。そのためには巨大な加速器が必要です。ILCは、人類が作り出す究極の電子顕微鏡といえるのかもしれません。