アジアとの協力

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ILC通信11.indd黒川眞一氏は、国際リニアコライダー運営委員会(ILCSC)の委員長として、ILCの実現に向けて、精力的に取り組んでいます。ILCSCは将来加速器国際委員会(ICFA)のもとに作られ、国際共同設計チーム(GDE)の活動の監督をしている組織です。黒川氏はILCSCの委員長として、今年2月8日にGDEよりILC基準設計報告書(RDR)の提出を受けました※。
黒川氏は、20年近くアジアの加速器研究者の間のより緊密な関係を構築してきました。1996年にアジア地域次世代加速器推進委員会(ACFA)が設立されて以来、黒川氏は委員として活躍し、2004年からの約2年間は委員長も務めました。世界には、加速器の全領域を扱う加速器会議が北米、ヨーロッパ、およびアジアの三拠点で地域加速器会議として開催されています。次回のアジア加速器会議は、2010年5月に京都で開催され、黒川氏が議長を務める予定です。
「アジア地域で加速器科学の活動を強化するのは、重要なことです。我々の協力関係は、ILCのためだけにあるのではありません。高エネルギー物理学、加速器物理学、放射光、パルス中性子源科学をカバーする加速器科学のあらゆる分野でアジアの国の間の強い関係を確立したいと考えています」
黒川氏の努力は2000年に日本学術振興会の日中拠点大学共同事業として実りました。この事業は、2005年に韓国、2006年にはインドを含む日中韓印拠点大学共同事業に発展しました。
「加速器科学において、中国、韓国、インド、台湾と日本間の協力関係は、重要であり更に強化される必要があります。また、ヴェトナム、タイ、フィリピン、パキスタン、インドネシアなど十分な潜在能力を持ちながら加速器科学がまだ発展していない国々で協力関係を築くことも非常に重要でもあります」
黒川氏は更に、中東の放射光施設への協力も行っており、2001年には大規模セミナーをヨルダンで開催しました。2007年度からは、日本学術振興会のプログラムであるアジア・アフリカ学術基盤形成事業が始まり、この施設への支援が更に活発化することになります。他にも、2006年5月に総合研究大学院大学(葉山)で第1回国際リニアコライダースクールが開かれた際も、現地実行委員長をつとめるなど、黒川氏の活動は多岐にわたります。
「ILCSCには、工学設計書(EDR)の完成に向け、ILCSCやGDEといった組織の役割をどうするのかを決める仕事が残されています。特に大切なのは、GDEを現在よりもしっかりした国際的な枠組みのもとに位置づけることですが、これにはILCに関わる全ての人々が一致協力することが必須です」

 

 

※2007年3月15日発行のILC通信第10号の巻頭写真をご覧下さい。一番右が黒川氏です。