野田佳彦 内閣総理大臣
2011 年12 月15 日に、リニアコライダー国際研究所建設推進議員連盟と先端加速器科学技術推進協議会(AAA)の共催による「第3 回先端加速器科学技術推進シンポジウム」が、『国際リニアコライダーと先端加速器の応用』-日本の成長・発展を目指して- というテーマでホテルルポール麹町(東京都)で開催された。
シンポジウムには野田佳彦内閣総理大臣をはじめ、政界、産業界、官庁、大学関係者ら150名の出席があった。欧州合同原子核研究機関(CERN)の大型ハ ドロンコライダー(LHC) によるヒッグス粒子の探索の状況が大きく報道された直後ということもあり、参加者はリニアコライダーの意義、物理やそれを支える加速器が医療などで最先端 の技術を支えている実情に関する講演を熱心に聞いていた。
シンポジウムでは、AAA の西岡喬会長より主催者挨拶がされた後、来賓として議連の元共同幹事長でもある、野田総理大臣が挨拶され「3人の日本人のノーベル賞受賞につながり、我が国に希望と誇りをもたらした加速器は、幅広い利用により産業の発展や豊かな暮らしにも大切な、欠かせないツールである」と述べた。国際リニアコライダー(ILC)については、「国民の理解や支持を得られるよう、実験の意義や有用性、未来の可能性などをわかりやすく説明して行くことが必要」との見解を示した。
シンポジウムには議員連盟より、同議員連盟会長代理の河村建夫元官房長官、与謝野馨元財務大臣(議員連盟最高顧問)、大畠章宏前国土交通大臣(議員連盟 顧問)、高木義明前文部科学大臣(議員連盟顧問)、斉藤鉄夫元環境大臣(議員連盟副会長)、塩谷立元文部科学大臣(議員連盟幹事長代理)、田村憲久衆議院 議員(議員連盟事務総長)、津村啓介衆議院議員(議員連盟事務局長)が来賓として列席され、河村議員、大畠議員、斉藤議員、塩谷議員が議員連盟を代表して 挨拶された。各議員からは「リニアコライダーは日本が国をあげて取り組む問題」(河村議員)、「宇宙の謎の解明によって、夢や希望の共有ができる」(大畠議員)、「(国内誘致に関しては)日本が熱意を示すことが必要」(斉藤議員)、「いかにしっかりやるか,取り組み方が大事」(塩谷議員)など、激励や助言があった。
文部科学省からは倉持隆雄研究振興局長が、「加速器科学の意義を国内外に発信することが重要」と、AAA の役割への期待を述べた。講演会では、議員連盟最高顧問・AAA 最高顧問の与謝野衆議院議員が「国家戦略と国際リニアコライダー計画」について講演を行った。与謝野氏は「この科学分野は日本に行けばできる、という『世界のセンター』を 作りたい」「科学研究は日本人の心の問題であり、生活の仕方や真剣さ、全てに関わっている」と述べ、国家戦略としての取組みの重要性を強調した。
産業界からは、三菱電機株式会社執行役員 山脇雅彦氏が「先端加速器の応用-粒子線治療装置-」と題して講演を行った。三菱電機は、TRISTAN や大型放射光施設(SPring-8)、RI ビームファクトリー、大強度陽子加速器施 設(J-PARC)といった、日本における主要な加速器の建設に携わっている。山脇氏はその実績と技術を応用して事業化した例として、粒子線によるガン治療装置をあげ、その技術から今後の展開の可能性まで解説した。
最後に、鈴木厚人高エネルギー加速器研究機構(KEK)機構長が「国際リニアコライダーの現状」と題して、講演を行った。昨年12 月13 日にヒッグス粒子の存在が期待される解析結果をCERN が発表したことをうけ、LHCの発見にもとづいて ILC でどのような研究が行われるか。宇宙のしくみを非常によく説明できる「標準理論」で唯一未発見であるヒッグス粒子は、「標準理論のパズルの最後のピース。しかし、それが見つかって素粒子理論が完成するということではなく、そこから新しい物理研究が始まる」と述べ、その探索ツールとしてのILC の有用性を強調した。