加速器図鑑:ビーム位置モニター(BPM)

コラム

BPMの断面図。ビームは中央を通る。

宇宙を舞台にしたSF 映画などではビーム兵器がよく出てくる。自分の宇宙船からビームを射って敵の宇宙船を破壊するビーム兵器はSFファンでなくても何度かお目にかかったことがあると思う。しかしどうやって自分が射ったビームを相手に当てるのだろう。SF 映画ではビームは目に見えるように描かれているが、実際のビームは目に見えない。特に真空中では光のビーム(レーザー)ですら目には見えない。ビームが何処を飛んでいるか判らないと、相手に当てることが出来ないのでは?との疑問もわいてくる。

前置きが長くなってしまったが、ビームの位置を測る装置がビーム位置モニター(BPM)である。加速器のビームパイプにはこのBPMが適当な間隔で取り付けられていて、ビームの位置を知らせてくれる。ここでは電子の加速器によく使われる板状電極を用いた BPM( 電極型BPM)の原理を簡単に説明する。図にあるようにこの BPM ではビームパイプの内側の4ケ所、上、下、左、右、に金属板(電極)がついている。電子はマイナスの電気*1 を持っているので、電子ビームがBPMの中を通ると各電極にはプラスの電気が誘起*2 される。電子ビームがちょうど中心を通れば各電極に誘起されるプラスの電気の量は同じになる。もし上にずれた所を通れば、上の電極には下の電極よりも多い電気が誘起される。この電気の量のアンバランスからビームの位置を知る事が出来る。こんな簡単な装置だが、数十ミクロン*3 の精度で我々にビームの位置を教えてくれる。このBPM があってはじめてビームが飛んでいる位置が判り、加速器の運転が可能になる。なおILC では電極型BPM よりいっそう高い精度、ナノメートル*4、でビーム位置が判る空洞型BPM も併用される。これについては機会を改めて紹介したい。

*1)正確には「電荷」。
*2)電極に繋がっている回路の導線を伝って集まってくる。
*3)ミクロンはマイクロメートルの略称。1 マイクロメートルは 1 メートルの100 万分の1。
*4)1 ナノメートルは 1 メートルの 10 億分の1